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第2話
その夜、食後に祖父とお風呂に入った時、祖父が訊ねた。
「お兄ちゃんていうのはどんな感じなんだ?」
「え?」
「二階にいるんだろう?」
祖父は何か考えこんでいるようだった。
「えーとね、甚平着てる」
「他には?」
「うーん……」
小一の僕にはどんな感じという漠然とした質問は、返事に困る問いかけだった。
祖父は僕の困った顔を見て、質問を変えた。
「辛そうな感じか?」
辛そうというのもあまりよくわからないけれど、考えて答えた。
「……たぶんそうじゃないと思う」
窓の外を見ている彼の横顔は静かで、僕は話しかけたことはない。幽霊だという認識はなくても何となく近寄りがたい雰囲気があったのかもしれない。
「咳込んだりしてないか?」
「してないよ」
「そうか」
祖父は僕の顔を見て、ちょっと笑った。
「泣いたりは?」
「そんなことないよ。窓のとこに座って外を見てるよ」
「窓の外を見てる?」
「うん」
「そうか。そのお兄ちゃんは静かにしているのが好きだから、構わないでおきなさい」
「うん、わかった」
その時、ふと幽霊という言葉が頭に浮かんだ。
そうか、お兄ちゃんは幽霊なのか。
だからお祖母ちゃんは知らないし、ご飯も食べないのか。
でもお祖父ちゃんは知っているみたいだ。
誰なのか訊いてみようかと思ったけれど、髪を洗われてシャンプーが目にしみそうになってぎゃあぎゃあ言っているうちに忘れてしまった。
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