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第3話

 次の日、僕は二階に上がってみた。 朝の光が差し込む和室には誰もいない。いつもいるわけではないと知っていたけれど、がっかりした。  別に彼に会って何かしようと思ったわけではなく、ただ本当に幽霊なのか確かめたかっただけだった。といっても確かめ方もわからないのだけど。  彼がよく座っている低い窓枠に腰かけて外を見たら、ちょうど正面玄関に続く通りから宅配便の車がやってくるのが見えた。 「お荷物でーす」  と配達員の声が聞こえた。おばあちゃんが「いつもご苦労様」と返事をしている。  お兄ちゃんもこうして外を眺めて楽しんでいるのかもしれない。  しばらくそうしていたが、彼は現れなかったし特に楽しいこともなかったので一階に降りた。  翌年、祖父は亡くなって彼が誰だったのか、訊けないままになった。  僕はその後も、二階の奥の和室を覗きに行った。  彼はいたりいなかったりだった。たいていいつも窓の外を見ていたが、たまには床に座っていることもあった。  目が合う気がした時もあるけれど、僕が見ていても彼とは視線が合わなかった。どうやら僕のことは見えていないようだった。

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