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第7話
「え?」
驚いて周囲を見回したら、そこは縁側だった。
いつの間に一階に?
いや、そもそも昼だったはずだ。
「康平、どうしたんだ?」
涼しげな声を掛けられて顔を向けたら、大きな蚊帳の中に修一郎がいた。落ち着いた優しい口調だ。何年も見ていたのに、声を聞いたのは初めてだった。
「どうって……」
何が起きたか戸惑う僕に、修一郎は蚊帳越しにふわりと微笑む。
「こっちに入れば? そこにいたら蚊にかまれてしまうよ」
「え、うん……」
立ち上がると甚平を着ていることに気づく。康平と呼びかけられたが誰だったっけ? いろいろ混乱しているが、床にたぐまった蚊帳を持ち上げ、とりあえず中に入った。
修一郎が親しみをこめた表情で僕を見ていた。
蚊帳の中はとても懐かしい感じがした。
なんだか久しぶりだ。
こうしてこの部屋で子供のころ妹や弟と遊んだ。この蚊帳に入ってキャンプごっこをするのがお気に入りで、その次が宇宙船ごっこだった。
…ん? キャンプ? 宇宙船?
なんだそれは。
僕は軽く頭を振った。
何か夢でも見たんだろうか。
今日は修一郎が泊りに来ているのだ。両親が親戚の結婚式で出かけると聞いて、夏休みだし一人きりは心配だからと遊びに来てくれた。
昼間は勉強したり絵を描いたりして過ごし、一緒に夕食を作った。作ったと言っても二人とも料理はできなくて、そうめんを茹でただけだ。でもガラスの器に盛ったら意外に美しく見えて、二人で食べるのは楽しかった。
交代で湯を使って、それで寝る用意をしていたんだ。
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