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第8話

 修一郎と二人で並んで縁側を向いて布団の上に座り、月明かりに照らされた庭を眺める。 「月が明るいな」 「ああ、明日も晴れるな」  白熱球の温かな光に照らされた横顔に、鼓動が走り出す。  他愛ない会話を交わしながら、ドキドキしてうつむいた。やけに顔が熱くなる。気持ちを気づかれないように、なるべくそっと呼吸する。 「きれいな月だ」 「ああ、そうだね」  それはどういう意味?  戸惑う僕に、修一郎はちょっと困った顔で笑いかけた。 「明日は魚釣りに行かないか? それとも家で本でも読むか?」  修一郎が訊ねた。 「魚釣りがいいな」  僕が答えると修一郎は優しく笑ってうなずいた。 「ああ、そうしよう」  そして近づいてきたと思ったら、唇が重なっていた。 「え?」  驚く僕に、修一郎は照れた顔でやさしく笑う。 「好きだよ」 「……うん」  心臓がばくばくして飛び出しそうだった。僕の気持ちが知られていた? でも修一郎は好きだよと言った。  混乱しているとそっと頬に手を添えられて、もう一度口づけられた。 「康平が好きだ。本当に好きなんだ」  僕を抱き寄せた修一郎の心臓の鼓動が伝わってきた。 「うん、僕も好きだよ」  それだけ言うのがやっとだった。 「ああ。待っているから、早く病気を治して戻って来いよ」  そうだった。もうじき療養のために家を出るんだ。 「……うん」  僕がうなずくと修一郎は力強く僕を抱きしめた。

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