9 / 16
第9話
「ちょっと、昼寝なら布団の上でしなさいよ」
肩を揺すられて目が覚めた。
「……ばあちゃん?」
「びっくりするじゃないの。こんなところで寝てたら」
「ごめん、急に眠くなって」
片付けの途中で寝てしまったのか。
夢を見た気がするが、なんだったっけ?
蚊帳を手に取った瞬間、ふっと夢の断片が浮かんだ。
「康平……」
「え、なあに?」
「祖母ちゃん、康平って人、知ってる?」
夢で僕が呼ばれた名前だ。ここに住んでいた人だろうか。
「康平? 聞いたことがあるわね……」
祖母は首をかしげてしばらく考え、もしかしたらと声を上げた。
「確かお祖父ちゃんのお兄さんがそんな名前だった気がするわ」
「お祖父ちゃんのお兄さん?」
「ええ。その人がどうかしたの?」
「ううん。本に名前が書いてあったから、誰かなと思っただけ」
祖母はああと納得した。
本棚からは康平の本の他に、修一郎の名が入った本も何冊か出てきていた。僕は時々、それを読んでいたのだ。
ともだちにシェアしよう!