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第9話

「ちょっと、昼寝なら布団の上でしなさいよ」  肩を揺すられて目が覚めた。 「……ばあちゃん?」 「びっくりするじゃないの。こんなところで寝てたら」 「ごめん、急に眠くなって」  片付けの途中で寝てしまったのか。  夢を見た気がするが、なんだったっけ?  蚊帳を手に取った瞬間、ふっと夢の断片が浮かんだ。 「康平……」 「え、なあに?」 「祖母ちゃん、康平って人、知ってる?」  夢で僕が呼ばれた名前だ。ここに住んでいた人だろうか。 「康平? 聞いたことがあるわね……」  祖母は首をかしげてしばらく考え、もしかしたらと声を上げた。 「確かお祖父ちゃんのお兄さんがそんな名前だった気がするわ」 「お祖父ちゃんのお兄さん?」 「ええ。その人がどうかしたの?」 「ううん。本に名前が書いてあったから、誰かなと思っただけ」  祖母はああと納得した。  本棚からは康平の本の他に、修一郎の名が入った本も何冊か出てきていた。僕は時々、それを読んでいたのだ。

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