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第13話

 帰り道の電車に揺られながら、僕はどうしようかと考えこんだ。 片づけをしていて康平になった夢を見た後、僕は押入れの奥から手紙が入った箱を見つけていた。康平が療養先で受け取った手紙の束で、親や兄弟からの手紙に混じって修一郎からの手紙が何通も入っていた。  僕は幽霊の修一郎に「これ読んでもいい?」と一応、声を掛けてから中を確かめた。  修一郎は学業を断念して家業を継いだことを言えず、そのまま勉強を続けていると書いていた。療養中の康平に精神的ショックを与えたくなかったのかもしれないし、単に言いづらかったのかもしれない。  いずれにしても康平は修一郎が医者になると信じていたのだ。  今日聞いた話からすると、修一郎が火事で亡くなった二ヶ月後に康平は療養先で亡くなっている。だから修一郎は康平の死を知らないまま、ずっとここで待ち続けていたのだ。  康平が修一郎の死を知ったかどうかはっきりしないが、療養先にそんなことをわざわざ知らせると思えないから、知らないままだったんじゃないだろうか。  彼らは互いの死を知らずに、どこかで康平も修一郎を待ち続けているのかもしれない。  知らせてあげたほうがいいのか、知らせるにしてもその方法があるのか。

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