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学校に通うと決まったあの日から2週間が過ぎようとしていた。 入学手続きや制服の手配などが終わり、ついに登校初日を迎えようとしている。 「わ、随分懐かしいね」 猫脚の全身鏡の前に立っている制服を着たボクを見るなり、後ろから抱きついてきた。 鏡を見てみると、綺麗なラベンダーのセットアップブレザーに白のワイシャツ。 「…すごい」 ボク本当に学校に通うんだ。 人生で初めて身につける制服をまじまじと見てしまう。 「うんうん、可愛い可愛い」 するりと後ろから手が伸びてきて、持っていた白のタイを首元で結った。 「これ、俺が使ってたタイだよ」 見てみて、とタイの端を指さされみてみると、紺の糸でAndy.Eと刺繍が施されている 「テオに身につけて欲しいな」 「うん」 ぎゅっとタイの端を無意識に握った 「アンディー」 「ん?」 「…ありがとう」 後ろを振り返って、目を見て言う。 「!!」 ボクは今うまく笑えているだろうか、ぎこちなくなってしまっているだろうか。 感謝の気持ちが、好意が少しでも伝わるといいな 「My pleasure.(お役に立てて光栄です)」 そう柔かに笑い、頬にキスをしてきた。 ボクもなんだか気持ちが昂って、アンディーの頬にキスをした。 「…はぁ。もう一度高等科をやり直して一緒に通いたいよ」 * 「じゃあ、迎えに来るからね。」 学校の校門の脇に停車し、車を降りる。 電話して、と車の窓をあけお別れの挨拶をした 「気をつけて」 「うん」 ツンと指の背でおでこを突かれた 「行ってきます」 結ってもらったタイを揺らがせ、校門に向かった。 なんだか、ドキドキする 元々文字は読み書きができたけど、 今日という日を迎えるまで、小学科の一から自宅でできる限りの勉強はしてきた。 本校は富裕層ばかりの進学校らしくてレベルが高いと、近所のタバコ屋のおばちゃんが言っていた。 アンディーはそんなこと一言も教えてくれなかったのに。 ついていけるか、とても不安だ。 振り返ってみるとアンディーがまだこちらの方を見ていたから、 なんとなく手を振ってみた。 すると、アンディーは手を軽くあげ返事をしてくれた。 校内を歩いていると、知った顔が見えた あ。キーだ。ボクと同じ色の制服を身につけてる。 相手もボクに気が付いたのか、凄まじい速さでこちらに駆けてきた 「テーオー!」 「やあっと見つけたんだから!」と会うなりハグをしてきた 「キー、どうしよう。ボクやっていけるかな」 「もう!かわいいなぁ」 大丈夫よと一言。 教室までキーとお話をしながら歩く。 みるもの全てが豪華で、新鮮でこんな空間知らない。 教室の扉の前まできた 「じゃあ、私は美術科だからここまでよ」という。 「…同じクラスだと思ってた」 「残念、でも大丈夫よ。この時期の編入生は珍しくないし、ほらあっちが私の教室。すぐそこだから困ったらおいで。」 「わかった。…ありがとうキー。」 別れ際のちょうど、同じタイミングに教師がやってきた。 説明会の時に会った、サティという女性だ。 教室の中へ入って自己紹介をお願いされる。 ドアを開けた。心臓が爆発しそうだ、 始まるんだ、ボクの学校生活が。 「初めまして、テオドール・エヴァンスです。…よろしくお願いします」 声が少し小さくなってしまった なにせこんな大勢の視線を浴びるのも初めてなのだから 「それでは、テオ、あなたの席はあそこよ」 指をさされた先をみてみると後ろの空席になってる机が2つあった。 右の方ね。と言われいう通りにそこへ向かう。

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