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ラブ・アット・ファースト・サイト ――貴方に一目惚れ 5

 明るい色合いの髪にゆるくパーマをかけた流行の髪型がよく似合う、整った顔立ち。斜めに結ばれた眉とアーモンド形の目は鋭く、肉食獣を連想させる。美しさとしなやかさ、野生の残忍さを感じさせる男だった。  コートを脱ぎ、男の座る席から二つほど離れた場所に腰を下ろした建樹が何を頼もうかと考えていると「今晩は」と、当の男が少し高めの声で話しかけてきた。 「……どうも」  訝しく思いながらそちらに目をやると、彼はさらに「御注文はお決まりですか?」などと訊いてきた。  それはバーテンダーのセリフだろうに、ますます奇妙なヤツだ。 「いや、まだ……」 「あの、もしもよろしければ、貴方に似合うオリジナルカクテルをプレゼントしたいのですが、いかがでしょう」  建樹は長身の美青年を見やり、疑わしげに訊いた。 「オリジナルカクテル?」 「ええ。その人のイメージに合わせてオリジナルを注文する。東京のあるバーではちょっとしたブームになっていて、結構ウケているらしいですよ」  いくらか自慢気な口ぶりに、この男の若さと幼さを感じる。それでも建樹は「お願いするよ」と答えた。  彼の指示どおりにバーテンダーはシェイカーを振り、建樹の前に差し出されたのは柑橘系の甘酸っぱい香りが漂う、淡い黄色のロングドリンクだった。

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