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ラブ・アット・ファースト・サイト ――貴方に一目惚れ 7
暗い赤褐色が今の自分を表しているとでも言いたいのだろうか。この身の抱えるものを感じ取って、赤いリキュールを加えたのだろうかと、黙ってグラスを口に運ぶ。
チナールを加えたカクテルはほろ苦く、これが現代人のストレスを発散させる味としてイタリアで人気がある、という話を建樹はのちに知った。
さっきから建樹の顔をチラチラと見ていた青年はふいに「失礼ですけど、お名前を教えていただけないでしょうか」と切り出した。
どこかで会った気がする、とでも切り出すつもりなのか。こちらは一向に覚えがないが、眉をひそめながらも建樹は答えた。
「ヒメノタツキ、だけれど」
お姫様のヒメ、野原のノ、建築のケンに樹木のジュと書いてキ、御丁寧にそこまで教えてやると、青年は嬉しそうな表情になった。
「ありがとうございます。貴方にぴったりの素敵な名前ですね」
「それはどうも」
無愛想な返事にもかかわらず、彼は自己紹介を始めた。
「オレ……じゃない、私は成瀬一耶(なるせ かずや)っていいます」
「君の名前を僕が聞いたところで、何になるというんだ?」
冷たい口調に怯む様子もなく、成瀬一耶と名乗った青年は「建樹さんにおぼえておいて欲しいからです」と、平然と答えた。
この男、いったいどういうつもりなんだと、訝しげな視線を送る建樹に、一耶は妖しげに微笑みかけた。
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