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ラブ・アット・ファースト・サイト ――貴方に一目惚れ 8
「そのカクテルに名前をつけてみましょうか。『Love at first sight』なんてどうでしょう?」
「……どういう意味?」
「貴方に一目惚れ」
突然の告白に驚きはしたが、それでも建樹は大人の余裕をみせようと「それはジョーク? それともゲームか何かのつもりかい?」と訊いた。
「ジョークに聞こえましたか? ゲームのつもりもありませんけど」
久しぶりに聞く告白に胸が熱くなるのを堪えて、建樹は気のないふりを続けた。
「生憎とそういう気分じゃないんでね」
ところが、その答えは相手を遠ざけるどころか、自分はゲイだと告白しているようなものである。
建樹の複雑な心情を察したであろう一耶は「どうすればそういう気分になっていただけますか?」などと、しぶとく食い下がった。
中学時代の初恋の人は同じ長身でも、がっちりとした体躯の持ち主だった。以来、つき合う相手は似たような男が多かった。
いかにも頼り甲斐のない、ひょろりと細長いタイプは好みではなかったはず。ましてや自分よりも年少なんて……
それなのに気になる。
ひょろりとした年下の美青年を見やった建樹は忘れかけていた感情が甦ってくるのに戸惑いながらも、平静を装って再びグラスに唇をつけた。
「しばらくは無理だね。わかっていたから、その赤いリキュールを入れたんじゃないのかな、どうなの?」
「それは……そうですけど」
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