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ラブ・アット・ファースト・サイト ――貴方に一目惚れ 10
上の連中におべっかを使い、自分の窮状に対して庇ってもくれなかったこの男、建樹には苦い思い出ばかりが残っているが、都合の悪いことは忘れて親しげに声を掛けてきた、といったところだ。
鵜川の隣にいるのは鷲津土建工業の社長で、駅前支店にとっては重要な取引先であり、奥の応接間にて支店長が応対する姿を建樹は何度となく目撃したことがあった。
仕事を離れればゴルフ仲間。プライベートなつき合いも頻繁な二人は気が合うというよりは、鵜川が子分に成り下がっていると表現した方が正しい。自分より力がある者なら、誰にでも尻尾を振るのだ。
会いたくもないのに会ってしまった。望まない再会に仕方なく会釈をすると、
「送別会もやらないままですまなかったね。何しろ急な異動だったから……」
「送別会? どういうことかね」
鵜川の言葉を聞き咎めた鷲津社長は今から食事に行くが君もどうだと誘ってきた。送別会代わりのつもりらしい。
「いえ、私が居たのではお邪魔かと」
一度は断った建樹だが、再度勧められて仕方なく同席することにした。
鵜川と一緒なのは気が進まない。しかし、せっかくの申し出を断って社長の機嫌を損ねてはまずい、そう判断したのだが、二人の御供で訪れたのはセレブのみが入店を許されるような料亭で、それだけでも気後れするのにそのあと向かったのは、一度だけ行ったことのある、あの高級ナイトクラブだった。
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