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ラブ・アット・ファースト・サイト ――貴方に一目惚れ 13
齢は若そうだ。スーツではなく着崩した感じの身なりからして青年実業家には見えないし、順当なところで水商売関係、それとも横文字で表す、流行りのクリエイティブな職業というやつなのか。どちらにしても懐に相当余裕のある者でなければ、この店での豪遊は難しいだろう。
すると、こちらの視線を感じたらしい男が振り返ったため、建樹は慌てて前を向いた。何を見ているんだと因縁でもつけられてはかなわない。
それにしても鷲津の酒豪ぶりときたら、新しいボトルを入れては空け、鵜川はおろか、若い建樹も太刀打ちできない。
このまま朝までつき合わされてはたまらない、と考えた建樹は自宅には母一人だからと理由をつけて帰らせてもらうことにした。
「それじゃあ、気をつけてな」
「はい、御馳走様でした。お休みなさい」
残った二人にそう挨拶したあと、店の外に出た建樹は足を踏み出したとたんに目眩がして、身体がふらついてしまった。自分ではそれほど飲んだつもりはないのだが、かなり酔っていたようだ。
これでは転んでしまうと壁に手をつこうとしたが、掌がつく前に彼の身体は力強い腕にがっちりと支えられていた。
「おっと、大丈夫か?」
聞き覚えのあるような、ないような声。
最近の若者にしては決して大きい方ではないが、それでも百七十センチ以上ある男を軽々と抱き止めた相手はかなりの長身で、がっちりとした肩幅の持ち主である。
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