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スコーピオン ――瞳で酔わせて 2

 いくらか自虐気味に答えたあと、恒星はカウンターの中から差し出されたバーボンのボトルを目の前に置き、それをロックで飲み始めた。 「あんたもやるか?」 「いえ、ですからもう……」 「そうだったな」  恒星はバーテンダーにコーヒーを入れるよう命じると、自分は二杯目のロックに取りかかった。さっきあれだけ飲んでいたのに、鷲津社長に負けず劣らずの底なしだと思っていたら「あの店で一緒だったのは鷲津土建の社長だろ。取引先の接待ってところか」と切り出してきた。  自分は女たちとさんざん騒いでいながら、こちらのテーブルの様子をしっかりと観察していたらしい。 「そういうわけでは……弊社の元上司との、プライベートな食事におつき合いしただけですから」 「城銀駅前支店の鵜川か、そういや居たな。元上司ってどういうことだ?」 「僕が支店からセンター……事務処理を扱う業務の場所へ異動になったんです」  鵜川の顔まで知っているのか。出会った時からうすうす感じてはいたが、この鷹岡恒星、相当油断のならない男のようだ。  余計なことを言ってしまった、これ以上は何も話さないようにしようと、建樹はコーヒーカップを口に運んだ。  しばしの沈黙が流れる。静まり返ると、天井から吊るされた二つのスピーカーからクール・ジャズが聞こえてきた。

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