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ブラッド&サンド ――切なさが止まらない 3

 センター長の言うように、向こうへ戻る機会が訪れる日はくるのだろうか。いや、多くを期待するのはやめようと建樹は思った。  期待と失望は表裏一体。裏切られた時のことを思えば何事も期待しない。それが一番気楽な生き方なのだ。  ビル群の中でも新しい北館の二階、ワンフロア全てが業務センターのオフィスである。クリーム色の壁に白い天井、床はコバルトブルーのカーペットが敷き詰めてあり、大きな窓に吊るされたブラインドを上げるとかなり明るく、広くて快適な空間だ。  内部はグループ毎に幾つかのスペースに区切られており、中でも一番広い場所を占めるのが為替送信グループで、各自の事務机とは別に、横五列に細長くずらりと並んだデスクの上には端末として使用されるパソコンが何十台も設置されている。  これは各営業店やシステム本部の大型コンピュータとオンラインで結ばれており、店頭で受け付けた顧客の振込伝票を光学読み取り装置で読み込ませると、そのデータが回線を通じて即座に送られてくる。  送られてきたデータは受け付け順に、パソコンの画面上に一件ずつ表示され、それらに誤りがないかを、段階を経て細かくチェックしたのち、修正後のデータを城銀本支店や他行の支店に送信する。  以上が為替送信の業務で、他のグループもそれぞれ営業店を補佐する仕事をしている。つまり業務センター設立の狙いは営業店の事務処理をバックアップし、各店における業務内容を簡素、スリム化することだった。

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