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ブラッド&サンド ――切なさが止まらない 4

 これから建樹に与えられる仕事はこの送信グループでのデータの最終チェックである。グループのメンバーが紹介されたあと、その中の一人の指導を受けながら業務をおぼえて欲しいと言われた。  建樹の指導担当はこのセンターに配属になって十年というベテランの女性で、もうすぐ五十に手が届くと自嘲気味に言った。 「みんなオバサンばっかり、なーんてガッカリしないでね」  営業店が最前線なら、ここは後方支援部隊である。定年を間近に控えた者や、彼女のような既婚女性が多くなるのも無理からぬことであり、また、結婚や出産を機に退職した女子行員がパートとして数多く復職しているので、ここにいるのはほとんどが女性、女の職場なのだ。  給与の高い行員すなわち正社員を減らし、パートに切り替えていこうとするのは銀行だけでなく、どこの業界、業種でも同じだ。  ゆえに建樹のように若い、しかも男の行員が配属される例はほとんどといってなく、フロアにいる全員への紹介後も、業務センター始まって以来の椿事──若くて超イケメンがやって来たと、別の部署からの見物人があとを絶たなかった。  中には韓流アイドルに入れ込む熱烈なファンのように手を振ってくるオバサマもいて、まるで空港に降り立った映画スターの気分だと建樹は苦笑した。二階は自分の噂で持ち切りだという一耶の言葉はあながちデタラメではなかったのだ。 「姫野さんが来てくれて助かったわ。若い男の人にはつまらない職場でしょうけどね」  申し訳なさそうに言われたが、若い女性の華やかさが苦手な建樹にとってはむしろありがたい環境だった。

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