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ブラッド&サンド ――切なさが止まらない 10

「ええ。それに関してはいろいろと……姉は建樹さんと同い年、いや、もう少し上かな。オレとはあんまり似てないけど、けっこう美人でしたよ」  こんな場合、何と言っていいのか言葉が見つからなくなっていたが、自分が口にした衝撃的な内容にもかかわらず、一耶は淡々としたまま食事を続けた。 「オレ、一時期グレていて、ゾクのアタマとかやってイキがっていたこともあったんですけど……」  ゾクのアタマ──暴走族か。そんな一耶自身の荒れていた過去は家族運のなさに起因していたのではないか。  安い同情などするべきではないと思いつつも、父を亡くしたばかりの建樹にしてみれば、彼の辛さは如何ばかりかと胸が痛んだ。 「でも、思い直して良かったなって。ちゃんと勉強してここに入社したから、建樹さんとも再会できたわけですし」  一目惚れしたという先のセリフにまたしても胸を踊らせながらも、建樹は諌めるように諭した。 「ダサいって言われるだろうけど、茨の道だよ。とてもお薦めできないな」 「それは経験からですか?」 「まあね」  ところが一耶は自信たっぷりに「そういう道を進むのは慣れてますから。あんまり見くびらないでくださいよ」と言い切った。 「修羅場は一度や二度じゃなかったと」 「ええ。二十三で十年のキャリアですから、年期が入ってるでしょ」

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