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ブラッド&サンド ――切なさが止まらない 11

 この男も早くからそういう指向だったのかと納得する。  それから一耶は携帯電話の番号とアドレスを交換してくれと持ちかけてきた。 「いいんですか? やった! これでオレたち……」 「親友同士だね」  建樹のおちょくりに、一耶は「ちぇっ」と舌打ちしながらも、嬉しさを隠そうともせず始終笑顔だった。  やれやれと、わざとらしい溜め息をついてから時計に目をやった建樹は「そろそろ行かなきゃ」と立ち上がった。 「あ、待って」  一耶はポケットから小さな冊子を取り出すと、建樹に手渡してきた。 「何?」 「スポーツクラブの案内です。社員割引効くから安く利用できるんですよ。ストレス解消にはもってこいでしょう?」  カクテルにチナールを注いだ真意──建樹の抱えるストレスを心配して、だろうか。 「そう。とりあえず有り難く貰っておくよ」 「とりあえずなんて言わないで、今すぐ入会しましょうよ。オレも今日、残業がなかったら、帰りに寄るつもりですし。じゃあ、現地で待ってますから」  一方的に約束を取りつける一耶に対して、メゲないヤツだと思いながら手元のパンフレットに目を落とす。五階建てのビルになっているこの施設はジムだけでなくプールもあるらしい。  久しぶりに泳いでみようか。そうだ、新しい水着を買って……

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