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デニッシュ・メアリー ――あなたの心が見えない 3

「お薦めコースでいいですか? ワインはどれを?」 「リストを見せてもらおうかな」  アボカドと小海老のサラダ、シチリアトマトのポタージュ、若鶏のポワレジュノバ風といった料理が運ばれてくる。  グラスを傾ける仕草を眩しそうに見つめていた一耶は「会社の食堂でもディナーでも、建樹さんと一緒に食べるなら何でも美味い」などと言った。 「おいおい、それじゃあ、この店のシェフに失礼だろう」 「でも本音ですよ。ここのところ、昼はずっと個食だったから」  ふと見せた寂しげな表情に胸を突かれる。どんなに明るく振る舞っていても、天涯孤独の翳がつきまとう、そんな感じだった。  家族四人で住んでいた頃の家はとっくに処分され、母親が亡くなったあともそのまま同じマンションに住み続けているという一耶は「夜勤はキツイけど、部屋に独りきりじゃない分マシ」と力なく笑った。 「そう……お姉さんの自殺の真相が知りたくて、転職したって言ってたよね。辛いことを訊くようだけど、知ってどうするつもりだったのかな」 「姉が亡くなったとき、オレだけ何も知らされなかったんですよ。自殺したらしい、鬱病気味だったって聞いたのも人づてで。父はともかく、母がどうして教えてくれなかったのかわからなくて、意地になって調査開始ってわけです」 「御両親は理由を秘密にしたかったのかもしれないね。それで、真相にはたどり着いたの?」 「まあ、だいたいは。相手がどこの誰かというところも把握してますけど、会って恨み言を言うとか、そんな目的があるわけじゃないんです。ただ……」  こんな話、暗くなるからよしましょうと言う一耶を見つめながら、建樹は虚無感に囚われていた。

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