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デニッシュ・メアリー ――あなたの心が見えない 10

 そんな彼に続いて姿を現したのは絶世の美女で、店に足を踏み入れたとたん、まるでその場にカトレアの花が咲いたかのような華やかさの持ち主であった。  その、モデルと見紛うばかりのスタイルの良さ。すらりと伸びた足に銀のパンプスを履き、肉感的なボディにはミントグリーンのミニのワンピース、さらに白いスプリングコートをまとっている。手にしているのはフランス製の高級ブランドバッグだ。  長い髪に大きめのウェーヴをかけた、流行りの髪型をしているが、美しくも気の強そうな顔立ちは男に媚びるどころか、女王然とした雰囲気で、水商売の女でないことは確かである。  恒星はバーテンダーに「約束の時間まで、ここで待たせてもらおうと思ってな」と弁明したあと、コーヒーを二つくれと続けた。 「ふうん、これが例のお店ね。カプリコーンとは趣が違うって話には聞いていたけど、来たのは初めて。たしかに地味だわ」  カトレア美女は挨拶もせずに、店内を遠慮なく眺め回した。 「いくらノスタルジックにって言っても、インテリアとか、やっぱりちょっと古臭くない? もう少し華やかにして、それにターゲットを男性に絞るなら、若い女の子を置くべきじゃないかしら」  紫苑の内装を批判し、我がもの顔で振る舞うこの女は何者なのか。  苦笑いを浮かべた恒星は女の肩を抱くようにして奥のテーブルに着くよう促し、それから何やら親しげに語り始めた。  彼が口にする冗談に、楽しげに笑う様子はクラブの女たちと同じような反応で、どんな種類の女でも楽しませる話術を心得ているあたりがさすがである。

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