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スティンガー ――危険な香り 4
壁に手をつき、腰を突き出すような格好をさせると、後ろから挿入。
この体勢でも恒星の動きの激しさは変わらず、立ったままでするという初めての行為に、建樹はこれまで味わったことのない快感をおぼえ、喉まで出かかった声を飲み込み、唇を噛んだ。貫かれる衝動で目眩がする。
「くっ……うっ」
欲しい……もっと、もっと、して欲しい。
身体が別の人格を持って訴えている。浅ましい欲望を振り払おうとしても無駄だ、建樹は恒星に合わせて腰を振り、貪欲に求めた。
「はぁっ……」
頭の中が真っ白になって果てるのと同時に自分の中の恒星も果て、粘った液が太股を伝う、生温かい感触がした。
「やっぱり、姫はこうでなくっちゃな」
恒星が果てたものを抜こうともせずに、満足気にそう言うと、横目で恨めしげに睨みながら、建樹は「……くせに」と呻いた。
「何だって?」
「婚約者がいるくせに、と言ったんだ」
この前出会った、美しくも高慢ちきな女の顔が思い浮かぶ。
建樹の言葉を聞いて、恒星は嬉しそうに「そうか、妬いているんだな」と言った。
「何をバカな! 僕はただ……」
「女と結婚する気があるなら、女だけ抱いていればいいのに、か? それとも、いい加減に遊ぶのをやめて身辺を整理しろ、そんでもってとっとと結婚しやがれ、かな?」
右手に付着した液をぺろりと舐め、恒星は不敵な笑みを浮かべた。
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