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スティンガー ――危険な香り 5
「そのどちらも願い下げだね。キレイな男の味もやめられない」
ティッシュで手際よく始末をすると、何事もなかったかのようにサーフパンツを上げた彼はカーテンの向こうへ出て行った。
今さらプールへ入る気力も体力もなくなり、建樹は服装を元通りに整えると、更衣室を出て再びロッカーを開けた。
幸い、他の会員は誰もおらず、小さな個室内の出来事は知られずに済んだと安心したが、どうしてこんなことにと、やり切れない思いが残った。
このままフロントへ戻るつもりでいると、ロッカールームを出てすぐのフロアにある、観葉植物に囲まれた休憩用のベンチで恒星が待っていた。
「せっかくだからVIPルームに案内してやろうか?」
「僕は一般の会員で、VIPじゃありませんから結構です」
「そう言わずに来いよ」
またしても強引に腕をつかまれ、エレベーターに乗って仕方なく連行された先は三階にある、特別会員専用の休憩室だった。
白いドアの前に立った恒星は会員証を取り出し、裏側の磁気部分を読み取らせてロックを解除した。
選ばれた者のみが入室できるシステム、というわけだが、今は無人。この時間に訪れたVIPは恒星だけのようだ。
窓にはクリーム色のブラインドが下がり、柔らかな色合いの照明が室内を明るく照らしている。アロマテラピーでリラックスということだろうか、ラベンターの香りが漂う。
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