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プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 1

 一耶と一度行ったことのあるこの店は黒を基調にしたインテリアが都会的で、紫苑とはかなり雰囲気が違う。  店内には若者やカップルの客が大勢おり、流れている曲もジャズではなく軽妙なポップス。バーというよりはスナックのような賑わいである。  カウンター席よりもテーブルが多く用意されているあたりも紫苑とは大きく違っている。ストゥールはすべて肩を寄せ合うカップルに占領されていたため、建樹は隅のテーブルを選んで座った。  昼間の一耶の態度にショックを受けたくせに、恒星の呼び出しにのこのこと応じるなんて。フローズン・ダイキリの冷たさを指先に感じたあと、自分への苛立ちと一緒に飲み干してみる。  呼び出しておきながら当人はまだ来ない。すっぽかされたのか、それならそれで構わないけれど。  それでも気になって入り口の付近にちらちらと視線を送っていると、 「誰をお探しですか?」  聞き覚えのある声と共に現れたのは一耶だった。  驚きのあまり硬直する建樹の隣に腰掛けると「悪いけど、後をつけさせてもらいました」と言ってのけた。 「……探偵ごっこかな」 「何とでも言ってください。『ライト・アローン』になるつもりはありませんから」  そこへ、いつもの黒い服に身を包んだ男が現れた。辺りを見回し、建樹の姿を認めたはいいが、見知らぬ若者の存在に不思議そうな顔をする。

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