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プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 2
「お待たせ……って、お連れありか」
とたんに一耶の顔色が変わった。
「まさかっ!」
両目を大きく見開き、呆然とする彼の反応に、わけがわからず二人を見比べていると、
「おや、どこかでお会いしましたっけ」
恒星は例によって人を食ったような態度で一耶に応対すると、建樹の向かい側の席に座った。何とも不安定で落ち着かない、奇妙な沈黙が漂う。
「あの、ご注文は?」
ぎこちない雰囲気のお客たちに困惑しているのか、おずおずと話しかけるギャルソンに対し、我に返った建樹はマティーニを追加、恒星はバーボンを頼んだ。
「じゃあ、ブルーベリースプリッツアーを」
それから建樹に一瞥をくれると、真っ直ぐに恒星を見据えた一耶は「鷹岡恒星さんですね。成瀬一耶と申します」と言い放った。
「成瀬……はて? 知らないな」
タバコをくわえて一耶を見返す恒星、思いがけず二人が出会ってしまった事態にハラハラするものの、建樹はどうしていいのかわからないままに成り行きを見守っている。
やがて注文のカクテルが運ばれてくると、一人で乾杯と言って淡い赤紫色のシャンパングラスを掲げた一耶は恒星に向かって言葉を突きつけた。
「雛形春菜という名の女性をおぼえていますか? このブルーベリースプリッツアーが好きだった人、過去に貴方が利用して捨てたオレの姉です」
「姉……だと?」
建樹が、そしてさすがの恒星も表情を変えた。
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