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プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 4

 真っ青になって息を呑む一耶、思いがけない展開に建樹も驚愕していた。 「どうやらヤバい筋に多額の借金があったらしくてな、かなり切羽詰っていたように見えたぜ。そこで要求どおりの金額を払ったが、親父さんの説得は失敗したらしくて、肝心の本人は死んでしまった」 「何て愚かな……父さん」  娘に死なれ、元妻にも先立たれ──慰謝料の件を知った母親は強請りのようなことをしてと、元夫をなじったに違いない。曲がったことの嫌いな人だったのだ。そして娘の死とのダブルショックが彼女の死期を早めた──後悔した父親自身も死を選んだとしたら、すべて納得がいく。 「だからオレには何も話してくれなかったのか……姉さんの手帳が無くなっていたのも、ケータイのアドレスが消されていたのも、全部父さんの仕業だったんだ」  一耶は悔しげに唇を噛んだ。  何のヒントもないまま、彼が転職までしてようやく探り当てた、恒星と春菜の繋がりを隠す細工をしたのは父だった。  それに、母にしてみれば別れたとはいえ、家族の恥を息子に伝えるのは忍びなかったのだろう。父の所業を伏せたまま世を去ってしまったのだ。  深く息をついた一耶はそれでも冷静に「姉が自分で選んだ生き方ですから、今さら責めるような真似はしません」と告げた。  初めて出会った時よりもずっと大人びて見えるようになった長身の美青年は「ただし」と付け加えた。 「これ以上、オレの大切な人を奪わないで欲しい。それだけです」 「大切な人、ねえ」

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