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プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 5

 紫煙をくゆらせながら、恒星は建樹と一耶を見比べた。 「俺が奪う奪わないの問題じゃない。どちらを選ぶのか、決めるのは姫自身だ」  言葉に詰まる一耶を余裕で眺めたあと、グラスに残った琥珀色の液体を飲み干して恒星は立ち上がった。 「……何か用があって呼び出したんじゃないんですか?」  ここにきてようやく口を開くことのできた建樹に向かって「いや、また今度にしよう」と答えると、支払いは済ませておくからと言い残して、恒星は立ち去った。  テーブルに取り残された二人は何をどう話していいのかわからず、互いに黙ったままカクテルを舐めていた。 「怒ってる?」  口火を切ったのは一耶の方で、建樹は無言で首を振った。知らされた事実があまりにも重過ぎて、今は何も考えられなかった。  一耶の姉を結果的に死へと追いやってしまったのは恒星だったなんて……  運命を呪うなどといった責任転嫁するような表現はしたくないが、こんなめぐり合わせがあっていいものか。信じられないほど残酷だ。  僕は、僕たちはこの先どうなってしまうのだろうか── 「あの、失礼ですが」  ふいの呼びかけに、現実に引き戻されて声のした方を見る。目の前には黒っぽいスーツをスマートに着こなした、理知的な顔立ちにメガネをかけた男が立っていた。年齢は三十後半から四十ぐらい。いかにも仕事のできそうな切れ者といった印象を受ける。

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