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プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 9

 たとえ形だけの夫婦だとしても、ルミには妻の座という特典が与えられるだけマシではないか。  他の女たちはどう思っているのか知らないが、恒星との関係を続ける限り今も、この先も、建樹の立場は愛人──その不名誉な称号には耐え難い。 「姫野さんは彼とは友人だと、御自分でおっしゃいましたけど、かなり古いおつき合いなのでしょうか?」 「いえ、最近知り合ったばかりで」 「そうですか。もっとも、古い、新しいつき合いと、深い、浅いは必ずしも比例するわけではありませんよね」  それはどういう意味だ。  何を言いたいのだと思いながらも建樹は無言でいたが、傍らの一耶は獣のようなギラリとした視線を送った。 「で、そちらの成瀬くんは姫野さんのボディガードも兼任かな。人気者はツライですね」  敵意をむき出しにした男を嘲笑うような将和の口ぶりに、一耶が反応するのを目で諌めながら、建樹は「ツライなんてとんでもない。いい友人に囲まれて私は幸せ者ですよ」と切り返した。  水割りを作り終えた羽田がグラスを三人の前に置くと、将和はそれを軽く飲み干したが、建樹も一耶も先のカクテルが残っていたために、彼の勧めにも関わらず、まだ手をつけられずにいた。 「それにしても、近頃の経済界はいかがなものでしょう。私どもは西銀のお世話になっておりますが、やっと景気が上向き傾向になってきたと言われても、我が社は恩恵に与れないらしくて、手厳しい対応をされて困っていますよ」

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