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プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 12
そのくせ、いつ一耶が彼の話を切り出してくるかと構えている自身に気づいて、建樹は戸惑いをおぼえた。
『オレの姉さんを裏切ったヤツですよ! そのせいで姉さんは死んだ。そういう非道な真似のできる男を、それでも好きだと言うんですか? なんでそこまであんなヤツを……オレじゃダメなんですか? どうして』
大袈裟な身振りで、ドラマに出てくるようなセリフを吐く一耶を想像するものの、実際の彼は口をつぐんで真っ直ぐに歩き続ける。
とうとう駅に辿り着いた。終電の時刻には間に合ったようである。
改札を抜け、建樹は下り、一耶は上りのホームへ向かいながら、振り向きもせずに「おやすみなさい」と言い残して去った。
とたんに建樹の中で何かが音を立てて崩れた。おやすみではない、さようならと言われた気がした。
さようなら──一耶からの、最後のメッセージ。
何も言わなかったのは引き止めるに値しないから。姉を死に追いやるような非情な男、そんなヤツに心を囚われてしまった愚か者に愛想を尽かしたのだ。
自分と恒星を、憎むべき男とを秤にかけた建樹のことなど、どうでもよくなった。このまま別れようと考えたに違いない。
春菜の件を知った以上、もう二度と恒星に会うつもりはなかった。いつかは別れなければならないと思っていた相手だ、それが早まっただけのことだ。未練など微塵もないと無理をして言いきかせた。
だが、同時に一耶も失う羽目になってしまった。これで何もかも失くしたのだ。もう僕は誰も愛さない──
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