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デプス・ボム ――口説き文句 2

 このセンターにおいて最悪の、もっとも犯してはならない重大ミス──それを処理したのは建樹自身だった。間違いに気づかないまま、処理完了のキーを押してしまったのだ。 「大変申し訳ありませんでした。只今からすぐ、訂正の手配をしますから」  全身の血の気が引いているせいか、彼の意識は朦朧としていた。手が震え、受話器を取り落としそうになる。担当者との受け答えを続けるのが精一杯だった。  いったい何をやっていたのか……処理時間の記録からして午後二時頃だ。  先日からの度重なるショックで頭がおかしくなっていたのか。余計なことを考え、上の空で仕事をしていたとでも? いや、まさか、そんなバカな……  この失態を報告すると、話はたちまちのうちに上層部へと伝わり、その日の業務が一段落したあと、建樹はセンター長の席の前に立たされ、延々と説教を食らう羽目になった。 「……うっかりミスとは、いったいどこに目をつけていたんだ、まったく。こんな低レベルのミスをやらかすなんて、駅前支店の元ホープが聞いて呆れるよ。君には期待していたのに残念だな、失望した」 「申し訳ありません」  噂どおり、彼はねちねちと厭味を言う男だった。四月中旬から始まるペイオフ関連の新規業務の担当に推薦しようと思っていたが、他の者に任せることにしただの、グループに三人配属される予定の、新入社員教育からもはずれてくれ云々。  その度に建樹は頭を下げ、自分の非を詫びた。始末書を受け取った時も、それを提出したあとも、嫌がらせとも思える皮肉が延々と続いた。 「あそこまでしつこく言うなんて、ちょっとひどいわよね。この仕事、誰だってミスはつきものよ」  席に戻ってきた建樹に、彼に同情した同僚たちが慰めの言葉をかけた。

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