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デプス・ボム ――口説き文句 4

 三寒四温といわれるこの季節である。朝から降り続いていた雨はやむ気配もなく、今もしとしとと音をたてていた。  以前にも同じような場面があった。  そうだ、あれは二月、センター行きを命じられた日だ。あの時、僕はふらりと紫苑に入って、そこで一耶に出会った。そのあと恒星にも出会ってしまったのだ──  ふと気づくと、彼はブロンズ色の扉の前に立っていた。  店の前のアスファルトが光り、扉も壁も寂しげに濡れそぼっている。  紫のライトは消え、看板も消えたままで、ここまで来てから今夜は営業日ではないと思い返すと、建樹は失望の溜め息をついた。  今すぐ会いたかった……誰に?   会いたかったのは安らげる人、それとも情熱をかき立てる人なのか。  欲しいものは平穏な温もり、それとも激しい抱擁なのか。  傍にいて欲しい相手は……ここにいない。  傘はあまり役に立っておらず、がっくりと落としたスーツの肩にも容赦ない滴が降り注ぎ、暗い滲みが広がってゆく。虚しさのあまり胸が潰れそうだ。  仕方なく引き返そうとした時「水も滴るイイ男がいると思ったら、姫じゃねえか」と声がして、黒い傘の下から恒星が現れた。 「どうした? 今夜は休みだが、一杯飲みたいなら開けてやるぜ」  無言でうなずく建樹をチラリと見やると、恒星は紫苑のドアの鍵を開けた。オーナーの権限で合鍵を持っているようだ。 「そんなに濡れちまって寒いだろ。風邪でもひいたら大変だ」  この店の、このストゥールに座るのは何度目だろう。見慣れた光景を眺める。

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