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フォールン・エンジェル ――叶わぬ願い 3

 それを聞いて、建樹は羽田の行動の意味を把握した。  鷲津土建への金の流れ、その情報を欲しがっているのは恒星だけではない。将和もまた、同じ目的のために欲しているのだ。  未来の義弟の存在に将和は脅かされていた。恒星に先を越されてはならない、それは将和自身の、社長への道が閉ざされてしまう羽目になりかねないからだ。  恒星が建樹を使って、城銀コンピュータ内のデータを手に入れようとしているらしいと知った将和が羽田たちに先回りさせて、建樹を車内に監禁するよう命じたのだろう。  だが、どうやって建樹のバッグにメモリが入っていることを知り得たのだ。恒星が将和あるいはルミに漏らしたとしか考えられないが、彼がそんなヘマをやらかすだろうか。  考えがそこまで辿り着くと、建樹の抱いていた恐怖は薄らぎ、代わりに疑念が湧いてきた。何か裏がある…… 「しかし、貴方も愚かなことをしたものですね。城銀の行員といったら大層なエリートでしょう。どんな部署にいたとしても、真面目に働いていれば食いっぱぐれのない、安定した一生を送れるというのに」  無言のままでいる相手に苛立ってきたのか、羽田は饒舌になった。 「そこまでして彼に尽くすとは愛人の鏡ですよ。ヘタな女より、男の方がよっぽど情が深いらしい。女は計算高いですからね」  男の愛人──  カプリコーンでの会話で、気づかれているとは薄々感じていたが、やはりそうだった。

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