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フォールン・エンジェル ――叶わぬ願い 5

「やっぱり、あんたらだったのか。随分と汚いマネしやがって、親分はどうした?」  いきり立つ一耶に対して、羽田は冷静な態度を崩さない。 「汚いマネとはとんだ言いがかりだ。もっと友好的に話し合いましょう、ドアの修理代を請求したりはしませんから」 「黙れ! さっさと建樹を返さないと……」 「返さないと、どうします? 貴方に何ができると言うのですか?」 「てめえっ」  野生の獰猛さを露わに、羽田に殴りかかろうとする一耶だが、 「もう、いいよ」 「建樹! 無事で……」  安堵した表情で何かを言いかけた一耶に黙っていろと合図を送ると、建樹はバッグの中からメモリを取り出して、羽田の前に突きつけた。 「一耶の仕出かしたことはこれで勘弁してください。それから僕の周囲についても、すべて穏便に取り計らっていただけると約束してくださいますか?」 「……いいでしょう」  差し出されたものを受け取った羽田は思いのほかあっさりと引き下がり、彼らが乗り込んだ黒い車はそのまま走り去った。  テールランプが見えなくなると、一耶は恐る恐る口を開いた。 「建樹、あのUSBは?」 「ああ。心配しなくてもいいよ」  建樹はそう答えると、不思議そうな顔をする一耶に向かって微笑んでみせた。

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