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フォールン・エンジェル ――叶わぬ願い 8

「貴方の危険な賭けに建樹を巻き込まないでください」  すると恒星は無言のまま奥のテーブルへと進み──いつぞや恒星がルミと一緒に座った席──その裏側に貼り付けてあった黒い小型の機械を剥ぎ取ると、革靴で踏み潰した。 「この機種の感度なら店中の音が拾える。なかなかやってくれるよ、あの女狐は」 「盗聴器……なるほど。そこに仕掛けてあったんですね」  将和たちにすべてが筒抜けだった理由も、何もかも納得がいったと建樹は思った。 「最後にひとつ、教えてください」  一耶の眼差しを跳ね返すかのように、恒星は彼を真っ直ぐに見た。 「それでも姉を愛していましたか?」 「……ああ」 「ずっとその言葉が聞きたかったんです。良かった、肩の荷が下りた」 「だが、一番じゃない。今はもう……」 「わかっています。ともかくこれでオレの理由探しの旅は終わりです」  ふっと静まり返り、いつもと同じ空間に戻った店内にはあの時と同じように『TWILIGHT MOON』が流れていた。 「今夜もバーボンにしますか?」  バーテンダーが声をかける。 「もらおうか。いや、ロックじゃない。ソーダ割にしよう」  ぼんやりとタバコをくわえながら、恒星は思い出話を語るかのようにひとりごちた。 「……やっぱり、ニューヨークへ行くべきだったのかもな。ジャズに埋もれて、飽きるほど聴いて。星にはならなくても、もっと別の生きる道があったかもしれない」

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