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周が通されたのはどうやら平助の寝床
砂壁に背を預け布団の上で胡座をかいている平助の上に乗せられている
「落ち着け」
「私は…婚約など、ぐす、…したくない」
切ない声を漏らす
日本の長子相続制度は周を苦しめることしかしない
次男は自由であるのに自分はなぜだ、と問うても誰も答えてはくれない
「…もう嫌だ。 好いてもいない相手とまぐわうなど、しんでしまいたい」
静かに睫毛を濡らしながら吐いた言葉。
その顔からはいつもの雰囲気などなく不安や絶望に溢れている。
自分がどれほどつまらぬ人生を送るかをもう目にしたようだ。
そんな周を平助はじっと背中を撫でながらあやしていた
「…好いてもいない相手とまぐわう前に、俺と睦み合わぬか」
「…なにを」
その刹那、周の唇を奪った
ほんの少しであったが
「は、…ンン」
「俺のことは好いているだろ?」
「…情の意味が違う」
「大丈夫、一時の過ちぐらい許してくれるさ」
それからというもの着物を脱がされる
月明かりが照らす下で周の肌は白く綺麗だ
下駄で走ったせいで血が出てしまった足の親指の付け根から始まり様々な箇所を舐め始める。
「汚いから…やめ、」
「周の身体だろ?汚い所などどこも無い」
長い長い夜が始まり
もう何度目かの絶頂を迎える頃
後ろからされ、口には指を四本銜えさせられる
閉まりがない口からは唾液が垂れ、目からは微かに涙をこぼす。頬を紅潮させ、紡がれる声はなんとも厭らしい。
そんな顔に男らしさはなく女のように甘い
全て平助を煽るものだ
「あ、あっ…へいす、け」
「愛しいぞ、あまね」
この時、周は平助の絶論さを思い知らされる
その後何度もしつこいくらいに求められ次の日、足腰が立たなくなったのを覚えている。
***
下駄で東屋に転がっていた小さい石を蹴る
ああ、思い出さなければよかったと後悔をしているのか少しだけ耳が赤い。
「若気の至ねえ…」
「なんです、もういいでしょう。その話は」
「はぁ…俺の下にいる時は本当に可愛いのに」
「五月蝿いです」
「へいへい、まぁいいけど」
ふと石から目をそらし顔を上げた瞬間
椿の花が目の前で音を立てて落ちた
それを見ていたのは周だけだ
「…不吉ですね」
「そういえば、婚約の件どうした?」
「…さあ、どうにかなるといいですが…」
「ま、いざという時は一緒に逃げるか」
「…何を馬鹿なことを」
「冗談ではないんだけどな」
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