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3.ウラアルファ〈3〉
「えっちいなあ、響」
「んっ、ちがっ……」
どう考えてもテメエには勝てねえよ、と反論しようにも当然、出来るわけがなく。
「勉強しなきゃなんねえ場所でこんなにしちゃって、ホント駄目だよなあ……響は」
「は、あっ……ちがっ、お……まえが」
「俺はなんもしてねえけど? 大体、触ってもねえじゃん」
「んっ、は、あっ……ム、カつくっ……く、たばれっ……あっ、ん」
慶史の言う通り、未だ触れられてもいないというのに、キスや胸への刺激だけで自身はすでに張り詰めてしまっていた。
情けなさ過ぎて流石に自分でも呆れる。
それに認めたくはないけれど、どこからともなく触れて欲しいという欲にまみれた主張の声が頭の中で響き始めて、心底自分という存在が嫌になった。
絶対にそんなこと、言いたくねえのに。
あれだけ拒んで結局感じてその上触って欲しいだなんて、死ぬ程恥ずかしいを通り越してそのまま逝ってしまう勢いだ。
「……にしてもホント、俺ってとことん甘いよな」
「なっ……にが」
耐えられない程の恥ずかしさに身を置くこととなっていた俺へ、慶史がフッと今度は柔らかく笑いかけてくる。
「触って欲しいんだろ……?」
「……!!」
思いもよらなかった慶史の言葉に、火を吹く程に赤くなる顔。
口をパクパクさせながら、図星なだけに何も言い返せない自分が今、物凄くカッコ悪い。
「どうなんだよ。ウンとか言ってみ? じゃねえと分かんねえなあ、俺」
嘘ついてんじゃねえ、このボケ!!
しっかりどうして欲しいかを理解しているくせに、慶史と言えば悪戯な笑みを浮かべるばかり。
何も言えないでいる俺を見つめながら、生地の上から自身へと指を這わしてくる。
それだけでもうたまらずピクりと体が跳ね上がってしまい、本当にどうしようもない。
「響?」
「っ……ん」
覗き込む視線から逃げるのに精一杯で、あまりにも無理な注文を前に俺はどうすることも出来ず思考は混乱していくばかりだった。
誰だと思ってんだよ、この俺を。
そんな死ぬ程恥ずかしいこと、ウンの2文字も言えるわけねえだろ……!
「別に俺はこのままでもいいんだけど」
「んっ……」
いいわけがない、遠回しに与えられるような刺激ではもう、身体が満足出来ないのだから。
触ってもらいたい、溢れ出ては消えてくれない本音。
けれど素直になれない性格が邪魔をして、苦しい程に体が火照って仕方ないのに、こんな状態になってまでも本心を打ち明けられずにいる。
今にも理性が音を立てて切れてしまいそうで、熱で潤みぼやけた視界の端に捉えられた慶史を感じながら、真っ正面から視線すら合わせられない。
「響」
「ん……」
そんな時、またしても耳元で囁かれてしまい、熱を持った吐息が堪えきれず唇から零れ落ちていく。
「……マジやべえくらい、……好きだぜ」
そして直後に、ほんの少しの間を経て掛けられた言葉に、一瞬なにも考えられず頭の中が真っ白になった。
「…!? けっ……ん、っ!!」
驚きの表情を浮かべ反射的に顔を上げた瞬間、目を合わせる前に唇を奪われてくぐもった声しか出てこない。
「んっ、ふ……! はっ」
しかも今回はそれだけでは終わらず、手際良くチャックが下ろされてしまったかと思えば、あっという間に自身は慶史の手の内へと捕らえられてしまった。
「あっ、ぁ……ん!」
粘着質な音とともに緩く上下に扱かれながら、なにかを言う事は到底叶わず、ただ唇から甘ったるい声を漏らしていくばかり。
こんな情けねえ野郎に、誰がした。
「ふっ……ん、あ! こ、えっ……や、べえっ……」
「いいって、どうせ誰も来ない」
「んっ、はっあぁ、やっ……!」
起立した先端はすでに先走りで溢れ、擦られる度にクチュりとやらしい音が漏れ出す。
このあってはならないシチュエーションに加えて、寄る快楽に溺れた取り返しのつかない状態。
「誰か来たらどうしよな? 見せつけちゃう?」
「ばっ、かやろっ…あっ、んなの、絶対っ…ぁっあ、や、だ…っ」
「ははっ、やっぱし? そうだなあ……」
這い上がってくる絶頂感に、脳内が蕩けかかる。
激しく追い上げられながら、再び胸の突起をも弄られ始めて、もう何も考えられなかった。
唯一あるとすれば、それは達したいという欲求だけ。
「もったいねえもんな」
少しの間を置いて囁かれた言葉をとどめに、ぐっと下から勢い良く擦り上げられた。
「くっ…ぁっ、ああっ!!」
そしてその瞬間、ビクンと体を駆け巡る強く甘い感覚に、身を任せるまま一気に果てていった。
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