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5.ウラアルファ〈3〉
「よっ」
確かに今、自分だけが椅子に座っている状況だったけれど、だからなんだという話。
一体なにを考えて座ろうなどと思ったのか、その意図に気付くことは叶わなかった。
いつもながら、何を考えているか分からない。
沸々と、あれやこれやと思考を巡らせていたら、下を向く俺の視界の端に映っていた慶史の片足が少しだけ後ろに伸ばされて、椅子の前足に引っ掛けてはズルズルと自分の元へと引き寄せていく。
「……」
それをなにがなんだか分からないながらも、隠れて見続けることしか出来ずにいた。
「よし来い響」
「!? な……!」
まさかイキナリ腕を引っ張られ引き寄せられるとは思っておらず、間抜けな声が唇からするりと抜け落ちてしまった。
当然バランスなどとれるはずもなく、勢い良く慶史の元へと倒れ込んでいく。
「っにすんだ……!」
「まあまあまあ」
ダイブした体はしっかりと慶史に抱き止められ、事故だったにしろギュッと抱き付いてしまった自分自身に心底嫌気がさす。
「テメ……! 離せって!」
椅子に腰掛ける慶史の上に何故か跨る形となってしまい、首に腕をまわすしかない状況に陥る。
何故こんな展開運びになってしまったのか、考えたところで答えが見つかるはずもない。
「あれ? 俺、なんかしたっけ」
「!? んっ……! さ、わん…なっ……」
腰にしっかりと腕をまわされ、どうにもならないながらもささやかな抵抗を繰り返していたところを、慶史の一言がグサリと刃を突き立ててくる。
「ホントに触らなかったら困るくせに、このお姫は」
「んっ! ……う、るせっ……、あっ」
即興で作り出された気色悪い事この上ない呼び名に反論することもままならず、ただただ翻弄されるの身。
向かい合わせという時点でもう終わったも同然だったが、また加えられる愛撫に自然と唇からは甘い声が零れ出す。
「ん……! はっ、あっ…や、だ……んっ!」
手にギュッと力を込めながら押し迫る快感に身を震わせていると、次にはまた別の箇所に新たな刺激を感じ始める。
ずり落ちた制服が更に今の自分のカッコ悪さに拍車をかけ、自身に感じる快感とともに内部にも何かを感じとっていく。
「ふ……ん! はっ……」
差し込まれた指が内部を進行する度にビクンと体が反応し、慶史の首にまわす腕にも自然と力が入る。
「ぁっ……く!」
その分、身体を支えている力がなくなってきて、不服にも慶史の肩に顔をうめながらギュッと抱き付く体勢になってしまった。
「ココだろ? お前のイイとこ……」
体中を電流が走り抜けていく様な感覚に、肩を掴む手へ更に力が入る。
指先が的確にその部分を貫く度に、狂い死にそうな程の矯声が零れ落ちていった。
「あっ! あっ、んっ! はっ、ん……あ!」
異物感などという感覚はとうの昔になく、絶妙な部分を突き続けてくる存在に、ただ素直に声を上げるしかなかった。
「あっ! も……む、りっ……ぁ、んっ!」
「もう限界か?」
しがみつく俺に、すぐ側で慶史が囁いてくる。
それにコクコクと瞬時に頷いてしまう位、今の状態は相当やばいところまできていた。
「分かった」
その行動に、どこか少し嬉しそうに言葉を紡ぎながら、内部を進んでいた指を一気に引き抜く。
「んっ……!」
それから程なくして、すっかり熱を持って主張していた慶史自身があてがわれる。
「っ……は、あっ!」
よく慣らされていた中は、特に大きな痛みを引き出すこともなく、少しずつ奥を目指して入り込んでくる自身を受け入れていく。
慶史の唇から時折滑り落ちる熱を含んだ息遣いに、敏感に反応してしまう自分がいる。
「響……、入った……」
「ん……」
慎重に押し進みながら全てが収まりきった頃、かけられた言葉に熱っぽい息遣いしか返せなくなっていた。
一拍置かれた間の後に、ゆっくりと最初は静かに、ズッと動き出していく。
「はっ……ぁ、ん」
繋がり合った部分からはクチュりとやらしい音が漏れ始め、それがまた押し寄せる快楽の果てへと導いていく。
「んっ、あっ……ぁ!」
しかもそれだけでは終わらず、密着しているせいで高ぶりを取り戻していた自身が、動く度に慶史の腹部に擦られて泣きたい程に気持ち良くやばい。
前から後ろからの刺激に、意識が今にも吹っ飛んでしまいそうだ。
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