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6.ウラアルファ〈3〉

「あっ、あっ……! け、いしぃっ……あ! ん、ぁっ!」 「はっ……いい、か?」 次第に激しさを増していく腰遣いに、やらしく響く水音が容赦なく絶頂へと駆り立てる。 「あっ、あ……!」 やべえ、もうっ…… 「もう!! ツイてないよー!!」 「あはは! でも今気付けて良かったじゃん!」 「そだね~! 早く取って戻らなきゃ!」 バタバタバタバタッ 「!?」 「…け、いしっ……」 もう今にも果ててしまいそうだったところで、突然の足音。 それは急いでいるようで、真っ直ぐこちらへと近付いてくる。 2つの声が廊下に響き渡り、瞬間身体を一気に強ばらせ鼓動が速くなっていく。 どうすんだよ…… こんなとこ……他の誰にも見られるわけにはいかねえのに……! けれどどうすることも出来なくて、自分でも驚く位に震えた声で、気が付けば弱々しく慶史の名前を呼んでいた。 そして、ギュッとしがみつく体に力を込める。 「慶史……? ぅわ! テメ何やっ……ん!」 「えっとー……何処だっけ何処だっけ」 「落ち着きなって、まだ時間あるんだし」 程なくして、二人分の足音が教室に入ってきた。 ガタガタと机の中を漁る音がして、焦って何かを探しているらしい。 その様子を聞きながら息を押し殺し、気配を絶っていた。 「うおー! どこいったんじゃワリャー!!」 「ちょっと、なに!? 唐突に人間捨てるな!」 あの時、俺を抱き締めたままと言うか、中に入ってしまっている状態で、慶史は突然立ち上がった。 とりあえず何をする気なのか分からずあたふたしてしまい、混乱している間に口を塞がれそのまま窓の端で揺れていたカーテンの中へ引きずり込まれる。 足元まで隠してくれるから、姿はとりあえず見えない。 「しっかし何キャラよ。ん? ねえ、アレ見て」 「あったー!! 良かった~!! て、え? 人が喜びに浸ってる時になに!」 何かに気付いたらしい言葉に、心臓がドクりと脈を打つ。 身を隠せるにしても応急処置程度な為に、矢張り頼りなくはある。 紡がれた言葉の意図することとは何か、内心かなり動揺しながら、壁を背に慶史に抱かれ未だに口を塞がれ続けている。 「アレ? 上履き? 誰のかなあ」 頼むっ…こっちに来るな……!! 「さあね~。なにもしかして今片っぽしか履いてないのかな。ドジか」 必死に願いながら、何一つとして音を出さないように身を凍てつかせる。 「……!?」 その時、意思に反する様な出来事が突如として襲い掛かってきた。 「……!!!」 薄布の向こうにはまだ誰かがいるというのに。 ジワジワと、内部で動き始めてきた。 「っ……!!」 当然反応せずにはいられず、慶史の制服を握り締めながら、なんとか動きを止めようとする。 「さすがにそれはないでしょ!」 「でも片っぽだけ取り残されてるじゃ~ん」 「っ……ん」 バカやろう! なにやってんだ慶史……!! 動くなっ…や、めろっ……! 「あ、ちょっとそんなことより時間ない!!」 「あ、やば!もうこんな時間じゃん!」 「急いで戻んないと!」 「あ~! ちょっと待ってよ~!」

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