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第12話 目撃
飛鳥と颯馬はカラオケ店の部屋で一息ついた。昴は3つ向こうの入口に近い部屋に案内されたことは確認済みなのであとはどうやって様子を窺うかが問題だった。
「ねえ、そまくん……ドリンク入れてくるついでにチラッと見てきてよ」
「俺が……かよ」
「そもそもすばくんのことが気になってつけてたのそまくんでしょ〜」
そう言われるとその通りなので何も言えなくなってしまう。
「わかったよ……お前は何がいいんだ?」
「ここってココアあるかな?なければオレンジジュースがいい!」
「はいはい、ココアかオレンジね」
渋々コップを持って部屋から出ていく。
ジュースサーバーやお手洗いに行くにはどうしても昴が案内された部屋の前を通ることになる。だからこれは覗きじゃないと自分に言い聞かせ、チラりと覗くと部屋の中には制服を纏った背の高い金髪の男が見えた。
何をしているんだと乗り込んでやろうかと少し考え、プラスチック製のコップを強く握る。しかし、部屋の中から聞こえたドサッという音がした。
「なっ……」
颯馬が目にしたのは、金髪の男……天賀谷京一を押し倒している昴の姿だった。
見てはいけないと頭では思っているのに体は動かず目が離せなくなる。
京一は手の甲で口を覆い首を横に振っているが、昴は構わず京一の制服をゆるめていく。京一の首元に顔を埋めると肌に吸い付いていき、京一の耳元で何かを囁いたかと思うと、昴は自分のシャツをたくし上げ、京一の手を掴み自らの胸へと導いた。自分の手と京一の手を重ね揉まされていたようだが、暫くすると京一も自発的に手を動かし、昴が手を離しても止めることはしなかった。
昴は空いた手で自分と京一のスラックスの前を寛げると性器を取り出し合わせるように両手で包み込み、手を上下に擦り始める。最初はゆるゆると動いていた手が段々と速度を増していき、カラオケの騒音に紛れて注意して聞かなければわからないほどに抑えた嬌声が聞こえる。
「あっ……んん……ふっ」
そう強く聞こえた時には2人とも達してしまったのか折り重なるようにソファーに倒れ込んでいた。
颯馬は目にした光景の生々しさに衝撃を受け、同時に劣情を煽られた。
下肢に熱が集まりどうしようかと思っていると京一目が合った。まずいと思い、部屋へと引き返す。
颯馬が慌てて部屋に戻ってきて、勢いよくドアを閉め、そのまま入口に座り込んでしまったので飛鳥は驚いた。
「そ、そまくんどうしたの?」
颯馬からの返事はなく、心配になった飛鳥は颯馬に近づき目線を合わせるようにしゃがんで顔を覗く。目が合うと、颯馬の顔は赤く、息も荒い。
「あす……か、ごめん」
颯馬は左腕で飛鳥のことを抱き寄せると、飛鳥の肩に顔を埋めて、利き手は自らの性器を取り出し、触れ自慰を始める。
「え。そ……そまくん何して……」
「収まんないから……暫くこのまま……何もしないから許してくれ」
飛鳥の香りがする。じっとりとした香りは頭を甘く痺れさせる。少し顔を動かせば細くて柔らかそうな首に吸いつくことも噛みつくことも出来そうで堪らない。
「飛鳥…………あす、かっ……」
先走りが溢れ、段々と性器と掌の間からグチュグチュと水音が響く。
颯馬は低い吐息で何度も名前を呼ばれると飛鳥も股の間がムズムズしてくる。
「そまく……ん」
自分の体の変化に戸惑った飛鳥が颯馬の名前を呼ぶ。
「っ……」
それだけで颯馬は堪え切れず気づけば自らの手の中に欲を放ってしまっていた。
「ごめん、飛鳥」
乱れた息と身だしなみを整えた颯馬は開口一番にそう言った。
「あ……ううん。びっくりしたけど大丈夫だよ」
飛鳥もそう返すけれど、颯馬と視線が合うことはなかった。
「……ねえ、そまくん。すばくんはどうしてた?」
「あ、ああ。昴は天賀谷と一緒だったけど……まあ、別に……」
颯馬が言葉を濁すことによって、飛鳥は何かあったのだろうと察してしまう。
「きょーちゃんと……すばくんが……」
今朝の光景を思い出してしまい、胸のもやもやがよみがえってしまう。
「そまくん、もう帰ろう」
飛鳥はカラオケに入った時と同様に颯馬の腕を引き、その場を後にしたのだった。
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