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第22話 勉強会1

颯馬と付き合い始めたが、特にこれといって何が変わったということもなく過ごしていた。 2人で勉強をするために一緒に帰り、テスト勉強をしていてわからないことがあれば聞くし、教えてくれる。 他愛もない話をして過ごすのはとても居心地がよかった。 変化を感じるのは自分よりも身近な人なのだなと感じたのは、雷斗の一言だった。 「なあ、飛鳥……最近、颯馬と2人で一緒にいること多いけど、3人じゃないの珍しいよな。まだ喧嘩してんの?」 「え……」 自分だけならまだしも、颯馬も関わってくる話のため、勝手に付き合っているとも言えず、雷斗に何と説明したものか困ってしまう。 「すばくんと喧嘩してるからというよりは……そまくんと仲良くしてるから最近よく2人でいる……の方が正しいかな?」 そうぼかしながら話している自分に嫌気がさす。 「それに、あれだよ。勉強教えてくれてて……」 「あ〜なるほど」 雷斗が何に納得したのかはわからないが、それで納得したのであればそれで構わない。 「で?颯馬に教わって、飛鳥ちゃんの勉強は捗ってますかな?」 そんなふざけた言い方で聞いてくるということは、雷斗も颯馬との勉強会は捗っていないと踏んでいるのだろう。 「捗ってると思って聞いてないでしょ?」 「まあ……颯馬って人にもの教えるの下手そうじゃん」 全くもってその通りなのでぐうの音も出ない。 聞けば教えてくれるが、自分ではわかっていることを省いて説明してくるのでその省いた部分に気づいて聞きだすまでのプロセスに時間が掛かりすぎていていつもほどは捗っていない。 それでも、颯馬の方も何とか伝えようと頑張ってくれていることはわかるのでそれはそれでありがたいし良いことだと思った。 何よりも今の状態になったからこそ、昴の存在のありがたみがわかるというものだ。 「下手でも僕一人でやるよりずっといいし、助かってるよ」 「ふーん、じゃあ俺も混ぜてもらおっかな!」 雷斗が突然とんでもないことを言い出す。 「らいくん!?」 「いやー、今日さ。彼女が家の用事で一緒に勉強できないから俺一人でやらないといけないかなって思ったんだけど、一人じゃ絶対寝て終わるの目に見えてるから頼むわ」 パンっと、顔の前で手を合わせて拝むように言われると無下にはできない。 「…………そまくんに聞いてみるからちょっと待ってて……」 「は?七峰が一緒に勉強する!?」 昼休みに事情を話に行くと、颯馬に鬼のような形相でにらまれてしまった。 「いや……ほんとごめんってば。でも、らいくんも困ってるみたいだしテスト勉強は皆でやった方が捗るでしょ……」 「七峰とやっても俺にメリットがないだろ」 雷斗も飛鳥も颯馬ほどには勉強ができないのでおそらく颯馬に教えてもらうことの方が圧倒的に多いだろうというのは想像がつく。 颯馬は本来なら一人で集中して勉強が捗るのだからメリットがないと言われるとどうしようもない。 颯馬に無理を言うよりも、雷斗になんと謝罪するべきか考えるべきかと思い始めた時に、不意に腰を引き寄せられた。 「飛鳥が……キスしてくれるなら考えてもいい」 耳元でそう囁かれ、一瞬何かわからなかったが、今の状況を把握し顔に熱が集まってくる。 「バッ!颯馬のバカ!!ここどこだと思ってるの!?」 颯馬の教室前の廊下で、人通りは多くはないがそこそこ人がいる場所で急に変な触れ方をされて思わず力いっぱい体を押し返してしまう。 それに対して颯馬はまたムスッとしてしまう。 「っ…………あとで」 颯馬の拗ねた表情についそう言ってしまう。 「らいくんとの勉強会が終わったらその……ほっぺでもゆるしてくれる……なら」 勢いで言ってみたものの、踏ん切りがつかず尻すぼみになってしまう。 「子供かよ」 「嫌ならしない!僕はらいくんと2人で勉強するもん!!」 子どもっぽいことを指摘されてついむっとしてしまう。 「嫌だとは言ってないだろ」 颯馬に頭を撫でられる。 「七峰が一緒なら学校に残ってやるか?それかファミレスでもいいけど」 「そまくん……」 颯馬が雷斗との勉強を受け入れてくれたことに驚きつつも、拒否しないでくれてことがなんだかうれしかった。 「ありがとう」

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