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第25話 ファミレスにて 視点:昴

「昴くん、今日はどうする?」 二度寝から意識を浮上させ、ベッドの上でもぞもぞしているとベッドに腰かけて優しく手で髪を梳いてくれる。甘えるようにキスをせがむと、啄むようなキスを繰り返し与えてくれる。 「京一さん……今何時?」 「11時になったところだよ」 京一の傍は居心地がよく、夏休みに入ってからは頻繁に京一の家へと通い一緒に過ごしていた。昨夜も自宅で夕飯を食べた後、両親に京一と一緒に出掛けるからお泊りをすると言って家を出てきた。 8時半に京一の家に着いてから一緒にお風呂に入り、明け方まで何度も抱き合った。 付き合う前までは性欲もそこまで強くないのかと思っていたが、一度始めてしまえば行為に耽ってしまうタイプだったのは嬉しい誤算だった。 「コーヒーでも入れてこようか?」 そういってベッドから立ち上がってキッチンへと向かおうとする京一のシャツを掴む。 「んっ……京一さんがいい」 被っていた布団から這い出して、身体を晒すと京一が息をのむのが伝わってきた。 京一がベッドに片手をついたのを確認して、首に腕を回して後ろへ体重をかけて倒れ込み、口づけを交わす。最初は触れるだけだったが、徐々に深く互いの熱を咥内で移しあうように貪る。 「ふっ……ん」 キスに夢中になっていると京一の指が胸の突起を掠めた。 「んん!!」 唇は塞がれたまま弱いところを弄られて身体がのけ反る。 少し触れられただけでそこは痛いほどピンと張る。優しく撫で捏ねられる快感で後孔もひくひくと疼く。 「きょ……いちさ……もう」 そういうと、どうしてほしいのか察して一度身体を離す。 「昴くん、後ろ向いてくれる?」 身体を反転させて膝を曲げて腰を浮かせると窄まりに京一の長い指が宛がわれゆっくりと出し入れされる。 「まだ柔らかいね。すぐに挿れても大丈夫?」 こくこくと頷くと、指を抜き京一のモノを深く打ち込まれる。 腰を掴み抽挿され、京一もこの身体に慣れてきたのかイイところを掠めていく。 「あっ、そこ……もっと」 一番好きなところにあたったことを知らせると、的確にそこを突いてくる。 「あ、ん、っ……」 中でイくと収縮と共に京一のモノも脈打ち、精を出し切った2人は乱れた呼吸を整えるように折り重なり手を握りながら互いの身体に唇を落とし、跡をつけ戯れた。 シャワーを浴び、身だしなみを整え時計に目をやると4時半を回っている。 さすがに何か食べなければと思い、2人で近くの店に食べに行こうという話になり、財布を持って徒歩15分ほどのファミレスにやってきた。 平日の夕方ということもあり閑散としておりお好きな席にどうぞと言われ奥の方の席に向かおうとすると見慣れた姿があった。 「颯馬……」 颯馬が4人掛けの席に1人で教科書を広げて陣取っていた。目が合うとあからさまに嫌そうな顔をしてこちらを見る。 「やあ、茅野。こんなところに1人で何してるの?」 「見ればわかんだろ。課題してんだよ」 机の上に載っているプリントを見ると、それは夏休みの課題として出されたものだった。 自分は京一と早々に終わらせてしまったので颯馬が苦戦しているのなら手伝ってあげたくなってしまうが、今は京一とのデート中だということを思い出しグッとこらえる。 そこでふと気づき辺りを見回してみる。 「昴くん、どうかしたの?」 きょろきょろとしているのを不審に思ったのか京一に尋ねられた。 辺りには見当たらないとなるといないのかもしれないと思いつつも、鉢合わせするのが怖く勇気を出して聞いてみることにした。 「……そ、颯馬、飛鳥は?」 「今は部活の合宿中だ」 答えを聞いて、ここにはいないのだという確信を得てほっとする。 「お前らデート中なんじゃねーの?そういうあからさまな雰囲気出されると気分悪くて仕方ねーんだけど?」 つまり、どこかへ行けと言われているのだと思うと胸が締め付けられる思いだった。 「茅野、そんな言い方はないだろう?ちょうどよかった、俺は君に話しておきたかったんだよね」 颯馬の物言いに屈することなく、京一は颯馬の向かいの席に座り、手招きして隣に座らせる。 「俺はお前と話したくないんだが」 颯馬は京一を睨みつけるが、全く動じる気配がないのを見るとため息をついてそれ以上何も言わずに座っている。言いたいことがあるなら勝手にしろということだろう。 「君、昴くんに酷いことしたって自覚あるの?」 「は?何。昴にお前に抱かれて来いって言ったことに説教しにきたのか?それ、お前が説教できるような立場なのかよ。昴抱いて付き合い始めたんだろ?」 「昴くんがどんな想いで俺のもとに来たのかも知らないでよくもそんなこと言えるな!!」 「あ、や……やめて」 今にも掴み掛りそうな2人に焦って思わず身を乗り出して間に入ろうとしてしまう。 気持ちは焦っているのに、昨日の夜から何も食べていなかったお腹がぐーと音を立てて恥ずかしさのあまり椅子に座り直し背を丸くしなるべく目立たないように小さくなる。穴があったら入りたい。 「とりあえず何か食ったら?それが目的できたんだろ」 颯馬がメニュー表を差し出してくれる。 こんな中で食事なんてと思い京一の方をちらりと見ると、微苦笑を浮かべながらも頷いてくれる。 「ごめんね。いいよ、何が食べたい?」 京一のハンバーグ定食と昴のカルボナーラを注文している間に颯馬はドリンクバーに行きコーヒーをいれていた。 「ほらよ」 颯馬はついでとばかりに水も2つ持ってきてくれた。 それを受け取りちびちび飲みながら颯馬の様子を観察するが、相変わらず京一の方には極力視線を向けないようにしているのだけはよくわかった。 「そうだ……昴、飛鳥はお前とゆっくり話してみたいんだと。謝りたいって言ってた」 颯馬は教科書を捲りながら思い出したようにそんなことを伝えてきた。 「……お、俺は話したくない」 「あっそ、別に無理にとは思ってねーよ。俺も飛鳥も」 あっさり引き下がられたことに颯馬にとっても飛鳥にとってもその程度のことなのかと思うとモヤモヤしてしまう。 「そ、颯馬は……飛鳥とはうまくいってるの?」 「さあな。でも今は恋人同士だしそれなりにはうまくいってるんじゃないか」 「え……」 驚いた声を上げたのは京一だった。 そういえば、颯馬に直接付き合いだしたとは聞いてはいなかったので、そうかもしれないということは京一には伝えていなかったことを思い出した。 「茅野……飛鳥と付き合ってるの?」 「は?そうだけど、お前に何の関係があるんだよ」 「……まさか、飛鳥のことも脅して無理やり……」 「だったら何だっていうんだよ。大体、お前は昴の彼氏で飛鳥とはただの幼馴染だろ。外野がうるせーんだよ」 2人の言い合いがヒートアップしてきたところに女子大生と思わしき店員が先ほど注文したメニューを持って声を掛けづらそうにしている。 「あの……失礼いたします。ハンバーグ定食とカルボナーラをお持ちいたしました。ご注文は以上でお間違いありませんか?」 「ああ、はい。間違いないです」 笑顔で答える京一に対して颯馬は舌打ちをして自分の注文分の代金を置いて席を立つ。 「あ、そ……颯馬……」 去っていく颯馬を引き留めようとするが、振り向くこともなく行ってしまう。 「本当に茅野って最低なやつだな……」 京一がそう颯馬のことを断じるのを聞いて、そうだという気持ちと、そうじゃないという、相反する気持ちで言葉にならない感情の代わりに瞳から涙が溢れてその後はまた京一を困らせてしまったのだった。

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