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第36話 僕の親友

夏休みが終わり、学校が再開した頃、親友の雷斗が見舞いに来てくれた。 「ホント、飛鳥が試合に来ないからビビったんだからな!」 大切な大会当日に時間になっても現れないことに不安を感じたらしく、いい成績を残せなかったのはお前のせいだと愚痴られている。 正直、そのくらいの軽口を叩いてもらえた方が憐れまれるより気持ちも楽だ。 「顧問とかは試合に集中しろっていうばっかで何あったか詳しく教えてくんねーし、飛鳥には何度連絡しても繋がんねーし、今日やっと颯馬捕まえて入院先やっと知れるとか友達甲斐が無いやつだな!」 「でもまあ……無事でよかったよ」 笑顔でハッキリと無事でよかったと言う雷斗を見ると今までの家族や幼馴染の顔と違って安心してしまい、思わず声を出して笑うと雷斗は「なんだよ」と少しムッとした表情になるが、「ごめんごめん」と謝るとすぐに表情が和らぐ。 「いや、僕もいい友達を持ったなって思って……らいくんのこと、ほんと好きだよ。気持ちが楽になる」 「ハハハ、俺に惚れるなよ?愛しの彼女がいるもんでな」 「僕はわりと面食いなので、そんな意味で好きになることは天地がひっくり返ってもないから安心してくれていいよ」 こんな馬鹿みたいな軽口を交わせる相手は雷斗だけだ。 「なあ、飛鳥……結構怪我してるみたいだけど、いつ退院できるんだ?」 「え……ああ、退院自体はあと2週間くらいじゃないかな?骨がくっつくには何ヶ月かかかるらしいし、自宅で療養することになるから学校にすぐに行けるわけじゃなさそうだけど……」 「え〜すげえ大変じゃん……」 話が怪我のことになった。これはいい機会だと思い、今自分の置かれている状況を雷斗には正直に話してみようと思えた。 「……らいくん、僕……もしかしたらもう部活には戻れないかもしれない……」 雷斗はその言葉を聞き、少し姿勢を正して続きを促すように視線を寄越し、黙っている。 「骨がちゃんとくっついてリハビリをすればまた歩いたりはできるようになるとは思うけど、もしかしたら後遺症が残るかもしれないって。それに、泳ぐことは出来るようになるかもしれないけど、選手として前にみたいに泳ぐことは難しいんじゃないかって言われた」 「……そうか」 医者から言われたことを正直に話すと、さすがの雷斗も少し表情が硬くなる。 しばらく目を瞑って何か考えているのかと思えば、急に目を開いて笑う。 「俺は、待ってるよ。飛鳥が諦めない限りは俺たちはチームメイトだ。ま、そんな繋がりがなくても俺の友達でいてくれるんだろ?な!」 「ふふ、ほんとらいくんってバカだなぁ〜。僕は部活に戻れないかもしれないって言っただけでらいくんと縁を切りますなんて一言も言ってないでしょ」 「はぁ?これは飛鳥ちゃんが急に深刻そうな顔するからビビらされただけです〜」 これから自分の体がどうなっていくのか不安なことは沢山あるのが本音だが、支えてくれる人がいる。 だから、何があっても諦めずに頑張ろうと心に誓った。

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