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五、鳴蜩

 「俺も、お前が可愛いよ」  茶化す気にはなれなかった。海生はとにかく必死なのだ。  「もう、俺は子供じゃないから…幻滅してるの分かってる。何で戻れないのかな…女だったら良かったな……」  蛹の中で溶け出しながら、成すべき形を見失わず、在るべき姿で解き放たれる虫たちは、一体どうやって定めを見つけているのだろうか…海生にはそれが疑問だった。  一紫には、何故海生がここまで細く白くなったのか、何故髪を切らないのかが分かった。  踏み込んではいけない事は分かっていたし、そのつもりも全く無かった。ただ、形を失ったこの存在の、本来の姿を取り戻してやりたい。一紫は、そんな気持ちに駆られた。昇華させてやらねば本能からも放たれないのだと、そんな気がした。  服の下は、思ってたよりも更にあちこちに湿疹が出来ていた。薄いTシャツの下にスルスルと掌を滑らせていくと、驚いた海生が身じろぐ。  「カズ兄?、カズ兄??」  困惑する海生に構わず、服を捲り肌を晒していく。  「待って、こんな、…嘘だろ」  薄く皮膚の柔らかい腹に唇を下ろすと、海生の混乱は酷くなった。チュ、と粘膜との触れ合いの音がすると、海生はビクンと跳ねる。浮いた骨をなぞって、反応した微かな尖りを擽る。一紫の腕を掴んでいた海生の腕は、いつの間にか離れ、キャラクターの顔を歪ませるほどの力で大きな枕にしがみついていて、刺激する度に湧く刺激を、なんとか受け流しているようだった。  「気持ちいいか…?」  胸をしゃぶられて弄られて散々腰を踊らされたのに、一紫から向けられた質問は、海生には意地悪く感じられた。  「こんな事……」  「するつもりじゃ無かったか…」  「……違、あ、」  答える前に、一紫が全部を剥ぎ取ってしまう。興奮が暴かれて、恥ずかしい。枕を無理矢理引っ張って、海生がすっかり顔を隠す。  子供の頃には無かったのに、そこはしっかり茂っていて、海生はちゃんと男性になっていた。一紫は、男性の相手の経験等一度も無く、刺激に熟れた相手をどうしたもんかと扱いに悩んだが、同性の勘のままに一紫は海生を口で愛撫した。  「カ、カズ兄……違う、こんなの、違う…違、あ、あっ!!」  呆気なく海生の性は登り詰め、発散すると、不憫なほどに体が痙攣していた。枯れた体力が保たずに放心する海生は、うわ言の様に違う、を呟き続けた。  一紫は、この行為が海生を傷付けている事も理解していた。けれど、事に及んだ。虫が火に入らぬ様にするには、時には手で払い除けねばならない。それか、火を消すしかないのだ。

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