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第9話
「俺は真の得点源は岸だと思おうけど。完璧なトス上げてくれなきゃ、誰もスパイク打てねーだろうが」
「それを決めてくれる得点源がスパイカーで、エースじゃね?」
真の解はどこにあるのか篠田も思案してみるが、結果は「自分たちがボールを落とさないこと」が負けないための解であると導いた。
勝つための話をしようとするならば、どれだけだって答えがあってより解が複雑になるだろう。
だが、負けないための解と置き換えると、共通解に「ボールを落とさないこと」と上がるはずだ。
それがゲームの一番大事なポイントだからだ。
岸先輩は片方の言う「完璧なトスを上げて得点につなげること」と「ボールを落とさないこと」両方が実現可能な人材である。
彼を試合に起用する以外に策があるか?
「はぁ、俺らがどう喚いたって、結局実力を持った岸と、ニュースターの八島との併用起用が一番なんだって、みんな気付いてる」一人ごちる先輩。
(……僕もその答えにしか行き着かない)
「ん? だとするなら、経験者で上手な篠田もいるんじゃね?」
「それには同意しかない」
「おい、篠田ボールカゴに入れて」
「っは、はい」
流されてきたボールをカゴに入れる。だが、スパイカーのスパイクが決まるとラリーは終了し、顧問は次のボールを要求する。
中に入れたはずのボールは速いスピードでサイクルする。
中学生の世代交代のようだと漠然と感じたのは、岸先輩と重なってしまったからに他ならなかった。
綺麗で見事なトスはスパイカーの手によって、一瞬で殺されてしまうのだ。
部活終わりのがらんどうになった館内にポツンと突っ立ってみる。張りっぱなしのネット側まで歩く。小学生とは段違いに高くなったポールを見て、手を伸ばし飛んでみる。
だが、162センチの背丈では多少の跳躍ごときでは、ネットから掌分をだすことで精一杯の自分。スパイカーとしてそこそこだった自分。中学入学前、岸先輩と対峙した時に感じた圧倒的な敗北感と劣等感。
それがいつしか憧憬に変わっていて、「自分はコートに立てなくてもこの人に負けたのなら」当然だと決め込んでしまったのは、本当にいつからだろうか。
ボールを一球取り出してきて、片手でボールを高くあげる。それから、走り込んでアタックライン手前で踏み込み、跳躍する。バックアタックという言葉は中学生からの概念で、後衛が唯一攻撃に参加できる手法だ。
がしょん。
上から打ち込むには高さが足りなかった。
「……」
メンバー落ちして当然であった。
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