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第24話

 「本当にどこまでお人好しなんだ」と御猪口を片手に俯いた。それから、暫時の沈黙の後に練習試合の申込みを承諾してくれた。  ちなみに、光明という焼酎の稀少さが気になって価格を調べてみると、一リットルにも満たないボトルでウン十万だった。  高崎の前で調べなくてよかったと心の底から思った。 (……酔いに任せて一気したあの一杯がもったいない……。大将が止めてくれたから良かったものの、絶対に値段知ってたんだろうな)  そして、翌月の残暑で蒸し器になっていた枇杷中学の館内には枇杷中学と永徳中学が集まることが実現した。  だが、相手チームの雰囲気があまり芳しくない。部内衝突でもしたのかと安易に考えていたが、試合中にキーパーソンらしき人物の不在に気付いた。 (たしか八島だったな)  スパイカーがトスを求める声は多田。多田も誰に上げるのかを声にしているので、篠田、高良——と八島以外の名前が次々と呼ばれていた。    そして、日向は息を呑んで「才能」というモノを間近で垣間見た。  途中交代で登場する奴がコートインしてきて、永徳の雰囲気がガラッと変わる。こちらの流れに呑まれてキツイはずなのに、笑みが溢れているのだ。その因子は「岸」と呼ばれているアイツだろう。  「おい、あのセッターのセットアップを記録に残してくれ」日向はベンチにいる部員に声をかけた。  放課後、全ての試合のセットアップの内訳を記録された冊子を渡される。  部員は分かりやすくまとめてくれていたので、開いて幾秒の時間を要さずに理解することができた。そして、高崎が岸をなかなか使いたがらなかった理由をなんとなく察する。  「うーん……こんな綺麗に平等なトスあげてんのなー」。  どうやら、上手なだけの奴だったらしい。人情にお熱いが、勝つために選択するということから逃げている。  それに高崎が気づいているからこそ、岸という奴をなかなかコートに立たせなかったと案じた。

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