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第10話 *

「……ん? あれ?」  光斗が熱に浮かされたような瞳で、陽斗を見あげてくる。不思議そうに首をかしげながら、鼻をクンクンさせた。 「陽斗からアルファの匂いがする」 「え? そう?」  手を伸ばして、陽斗に抱きつくと、首筋の匂いをかいだ。 「……いいにおい」  それはさっきの暴漢のものか、それとも無礼な白金髪のものか。 「電車の中で、隣にでもアルファがいたのかな」  発情中のオメガは情緒不安定になりやすい。心配をかけたくなくて、陽斗は嘘をついた。 「……はぁ、したくなっちゃう」  光斗が腰をモゾモゾと動かす。すると低い振動音が下肢から聞こえてきた。 「……あれ、もしかして、入ってる?」 「ごめ。うん。ローター、我慢できなくて入れちゃった……」  申し訳なさそうに言う。発情がどんなにつらいものなのか、それくらいわかっているから気を遣わなくてもいいのに。 「そか」 「……ぁ、どしよ、も、そろそろ、イきそ」  光斗がやるせなさそうな顔になったのを見て、陽斗はベッド脇においてあったティッシュボックスから、ティッシュを数枚引き抜いた。 「手伝ってやるよ」 「う……。ごめんね、いつも」 「いいよ。さ、出せよ」

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