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第13話 レア・アルファ
◇◇◇
翌日、陽斗はアルバイト先の引越し業者で仕事をした後、午後五時すぎに事務所を出た。
就活は休まず続けているが、生活もあるので同時並行でバイトもしている。身体を鍛える意味もあって、今の仕事に就いていた。
「……ねえ、見てあれ」
最寄り駅に向かおうとしたら、歩道の先がなぜか騒がしい。通行人が幾人も立ちどまり、ある場所を興味深げに眺めている。何事かとそちらに視線を向けて、驚いた。
「え?」
そこには黒塗りの外国車と、大きな花束を抱えて立つ背の高い美男子――見覚えのあるレア・アルファがいた。
「あいつは……」
どうしてここに、と呆気にとられていたら男と目があう。
「やあ」
相手はニッコリと輝くような微笑みを見せ、こちらに向かって歩いてきた。
そして陽斗の前までくると、バサリと花束を差し出す。
「昨日はごめんね」
いきなり鼻先に華やかな匂いの薔薇や百合やデイジーが突きつけられて、警戒心がそがれてしまった。
「君に会えた嬉しさに、つい羽目を外してしまった。傷つけたのなら、まずそれを謝罪したい」
「……」
銀灰色の瞳はとろけるように甘い。
「そして改めて、お願いにきた」
「俺がここで働いてること何で知ってんだよ。てか、ホントあんた誰」
驚きつつ胡乱な目でたずねると、男は、「ああ」という顔になった。
「僕のこと、知らないんだ」
「知らない」
「ふむ。じゃあウィキペディアで調べてくれるかい。概要が載っている。それ以外にもっと詳しく知りたいのならSNSで検索してくれれば仕事もプライベートも出てくるよ」
「……ええ?」
ウィキに載っているとは。いったいどういう人物なのか。
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