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第17話

 もしかして、自分の心の奥底をのぞいてみたら、このレア・アルファともう少し一緒にすごしてみたい、彼のことを知りたいという気持ちを見つけたかもしれない。  けれど、それには蓋をして鍵をかけた。発情もしないオメガが、アルファに何を期待できるというのか。 「よかった。ありがとう。君は本当はとても優しい子なんだね」  心から嬉しそうな顔で言う高梨に、陽斗は居心地の悪さを覚えた。そんなにほめられても困るだけだ。面倒だから、引き受けただけなのに。  高梨は紳士然とした優雅なしぐさで、かろやかに陽斗を車までエスコートした。車には運転手がいて、陽斗に頭をさげてから後部座席側のドアをあけた。 「……あ、ども」  陽斗が乗りこむと、隣に高梨がくる。そういえば昨夜もこの男は車の後部からおりてきたかもしれない。運転手つきの高級外車に乗る男。どれだけ金持ちなんだろう。  車が走り出すと、陽斗はポケットからスマホを取り出して『タカナシユイキ』について検索をしてみた。  するとすぐに情報が出てくる。 『高梨唯一輝。日本の主要都市に七つの高級ホテルと、四つのリゾートホテル、その他旅館やレストラン等を複数持つ高梨グループのCEO。父親で創業者である高梨央樹(ひろき)(故人)は、生前ホテル王と呼ばれた。一九九×年六月七日生まれ。レア・アルファ。東京都大学経済学部 首席卒業。独身――』  書かれた内容に目を丸くする。東京都大学はこの国の最高学府だ。そこを首席で卒業しているとは。すると横から本人が口をはさんできた。 「そこに書かれてるのは、僕についてのほんの一部だ。メッセージアプリを交換しようか。そうすれば僕のSNSから最新の情報をえられるよ。連絡も取りあえるし」 「……いや別に。そこまでする必要ないし」 「ええ? でも不便だよ」

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