20 / 158

第20話

「――」  そこには、見たこともないほど豪華な、美しい部屋が広がっていた。  三十畳はあるかと思われるリビングに、続きのダイニング。十人は座れる大きな布張りソファに、大理石の敷きつめられた床。高級なペルシャ絨毯。上品に配置されたデザイン性の高い家具や照明は、素人の陽斗が見てもわかる一流品ばかりだ。奥には洒落たバーカウンターまである。 「うわ……」  淡いライトに照らされた室内は、しかし決して派手ではなく落ち着いた雰囲気に造られていた。 「どう? 気に入った?」  陽斗の後ろから、高梨の声がかかる。 「すげー。こんな立派なホテル、初めて入った」 「ロイヤルスイートなんだ。このホテルで一番高級な部屋だよ。ほら、こっちも見て」  背を押されて連れていかれたのは、南側一面に設えられたガラス窓だ。その外側に、広いバルコニーが見えている。バルコニーには植木がならび、きれいな石が敷かれ、真ん中に噴水まであった。所々におかれたランプがオレンジ色の光を放ち、幻想的な空間となっている。視界の先には煌めく都心の夜景。素晴らしい空中庭園だった。 「きれいだな」 「寝室も見て」  手を取られ、高梨に引っ張られるまま奥にある寝室へと向かう。そこにはダブルベッドがおかれていた。ゲスト用の寝室もありそちらはツインになっている。どちらも美しく、繊細な装飾が施されていた。  デザインのテーマはアジアンらしい。籐や竹などの自然素材がふんだんに使われている。しかし全体的に洗練されたスタイリッシュな印象を受けた。

ともだちにシェアしよう!