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第21話
「このスイートは僕がプロデュースしたんだ。もちろん、僕自身は建築のプロじゃないから、デザイナーや建築家の手を借りたけどね。この部屋は君をイメージして作ったものなんだよ」
「俺を?」
「そう」
「けど、俺たちまだ出会ったばかりじゃ」
「うん。だから、僕の運命の相手はきっとこんな人だろうなあと想像しながら、その人が好きになってくれるのはどんな部屋かなと考えて、いつかきっとふたりですごしたいと夢見ながら作ったんだ」
「……」
何というか、このCEOは非常にドリーマーな性格をしているようだ。たしか、歳はウィキによると二十七。なのに少年のような無邪気さがある。
「これを、俺に、見せたかった?」
「そう。これが僕のできることで、君にまず見せられる最高のプレゼンだったから」
「はあ、なるほど」
自己紹介みたいなものなのか。それをわざわざ数年かけて準備するとは、どれだけ運命のオメガに入れこんでいたのか。
「ていうか、あんたすげぇ人なんだな。住む世界が違いすぎる」
「ええ? そんなことない。ここにあるものはすべて、君が望めば手に入るものなんだよ。僕と結婚すればね」
にっこりと微笑まれて、陽斗は若干身を引いた。
「……」
身の程をこえた幸せは、何というか分不相応な気がしてしまう。
この男と結婚すれば金銭的には楽になるだろうが、果たしてそんな簡単に受け入れていいものなのか。
「陽斗君、夕食は食べたかい?」
考えこんでいると、それを読んだかのように、高梨が話題を変えた。
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