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第31話 すれ違い

◇◇◇  どうしてこうなった。  陽斗はぼんやりした頭で考えた。  最高級のベッドルームで上質なシーツにくるまり、自分は横になっている。  背後には全裸の男。  朝日さす部屋の中で、呆然と瞬きもせず男の腕の中に収まっているそんな自分も全裸だ。 「……おはよう。起きてる?」  彼が寝起きの少し掠れた声できいてくる。甘い甘い、耳から溶けていくようなハスキーボイスだ。 「起きてる。ていうか、一睡もしてないし」  あれからふたりは、明け方まで行為に及んだ。レア・アルファの性欲は逞しく、陽斗は何度お願いしても解放してもらえなかった。挿入だけはしなかったが、それ以外の場所は散々(もてあそ)ばれた。 「陽斗君。……すごく可愛かった」  満足げな背後の男からは、ハートがたくさん漂ってくるようだ。陽斗は男の手を振りほどいて、シーツの上に上半身を起こした。 「つか、あんた、俺が嫌がることはしないって言ったはずだよな」  陽斗が声を荒らげると、相手がポカンと口をあけた顔になる。しかしその若干間の抜けた表情も男前だ。寝乱れた髪が超絶に色っぽい。 「嫌がってた?」 「寝こみを襲っただろ」 「けど、あれは君がフェロモンを出して僕を誘ったから」 「そんな言いわけ通用すると思うか」 「でも、君は、本気で拒否はしなかった」  うっ……と言葉につまる。たしかに、逃げようと思えば逃げられたかもしれないし、本気で嫌がれば、この男だったら手をとめてくれた気がする。

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