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第41話 取引

◇◇◇  家に着くと、陽斗は光斗を早めに休ませて、自分は家の周囲を見まわった後、厳重に戸締まりをした。玄関にはバッドもおいておく。  できる限りの防犯対策をするが、古い家屋には限界があり不安が残る。家計を圧迫しても警備会社と契約すべきかと考えて、スマホで料金表を調べてみたが、仕事もままならない今、価格表のゼロの数に頭が痛んだ。  そうしていると、メールが一件届く。差出人は昨日面接を受けた動物病院からだ。どうやら結果が出たらしい。  ――どうか、採用されていますように。  祈るような気持ちで、メールをひらく。 だが結果は不採用だった。 「……まじか」  ベッドにガックリと腰を落としてうなだれる。最後の望みが消えて、半端ない落ちこみ感に襲われた。 「……」  落胆にため息さえ出てこない。  陽斗は顔を両手でおおって、嗚咽をもらすのをこらえた。気が緩んだら泣いてしまいそうだった。ベッドにごろんと横になり、「大丈夫、大丈夫だから」と呪文のように繰り返す。 「くそ、これぐらいで負けたたまるか」  しかしそうはいっても、社会から放り出されたような心許なさは簡単にはおさまらない。  もうそろそろ、本気で夢を捨てるときがきているのかもしれない。子供の頃からの陽斗の希望だった職業。犬や猫が好きで、トリミング動画は何時間見ても飽きなかったし、将来は自分もトリマーとして動物の世話をしたいと思っていた。  動物は人間のフェロモンに性的には反応しない。だから犬猫に嫌われることはないからそちらに問題はないのだが、悪いことに飼い主のアルファが反応してしまうのだ。  もちろんどの職場であってもアルファとは遭遇するだろうし、抑制剤さえ飲んでいれば問題が起きることはほぼないのに、それでも雇用主はオメガの採用を躊躇する。

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